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第126話

一時的なものだと聞いて、緊張の糸が緩み、大きな溜息が漏れる。 まだ目覚めていないので何とも言えないが、これが永遠に続いたならば……と、最悪のことまで考えてしまいそうだった頭を一度リセットできる。 雷太は雪の眠るベッドの横にパイプ椅子を出して腰を下ろした。 「雪……、ごめん、雪」 雷太は意識のない雪に謝罪する。 こうなってしまったのは全て自分が不甲斐ないせいだ。 ろくに自分の気持ちも伝えず、身体ばかりを先行させてしまったから。 きっとどこかで仮の恋人同士だということが明るみに出てしまったんだろう。 自分が今までしてきたことが空回りしていた証拠だ。 「雪、ごめん。ごめん……」 返事のない雪の白い顔を見詰め、手を握る。 手は冷たいが、柔らかい。 生きている証だった。 雷太は雪の手を握りながら窓の外へ目をやった。 きっと今ごろ選抜リレーが終わったころだ。この後はダンスがあって閉会式となる。 いざとなったら屈狸に変身してもらい、雷太の姿で閉会式へ参加してもらう手筈になっていた。 体育祭のことは周りに任せよう。 それよりも今は雪の容態が心配だった。 雷太は祈る。 雪の人懐っこく明るい笑顔がもう一度見たい。 雪の強気で快活な話声が聞きたいと。 何度もごめんと繰り返し、何度も好きだと繰り返した。 実際はそんなに長い時間ではなかったかもしれない。 しかし雪が真っ白な顔色で眠っている間雷太は永遠とも思える時の流れを感じていた。 何度目になるのかわからない雷太の告白で異変が起きた。 「大好きだ、雪。……だから目を覚ましてくれ。お願いだ」 雷太が祈る。すると雷太の欲していた雪の声が耳に届いた。 「……ほんと?」 「あぁ、何度でも言う。雪が好きだ、大好きだ」 「おれも……、らいた、のこと……すき」 「……っ!?」 雷太は自分の不安が呼び寄せた幻聴と会話しているのかと思っていた。 心配のあまり、雪の元気な姿を思い描き、リアルな声まで再現しているのだと。 しかし、雷太の目には、雪のつぶらな瞳が映る。 重そうな瞼をうっすら開けて、雷太をじっと見詰めていた。 「雪……!!雪!!!」

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