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第127話
雪は雷太の告白で目を覚ましたようだった。
雷太の握る雪の手は少しずつ温かになり、血の気を失った肌色も徐々に本来の色を取り戻したように思えた。
「雷太……俺、生きてるんだよな……?これ、夢じゃないよな?」
「あぁ。間違いなく現実だ。雪、雪……、よかった、本当によかった」
雷太の目尻からつぅと一筋の涙が零れ落ちた。
「雷太、泣かないで」
「あぁ、これは嬉しいからだ。雪とこうしてまた話ができることがとても嬉しいんだ」
「俺も嬉しい。嬉しいよ、雷太。雷太にぎゅうってしてもらいたい」
雪はそう言って、まだ力が十分に入らない手で身体を起こそうとする。
「無理するな。そんなの身体が戻ってからいくらでもできる」
「今がいい。今、雷太に抱き締めてもらいたい」
雪自身、生きているということが半信半疑で不安だったのだろう。
抱き締められて生を実感したかったのかもしれない。
雪は雷太の制止する声も聞かず、体を起こそうとする。
見兼ねた雷太は椅子から腰を浮かし雪に手を貸した。
雷太の力を借りて雪は上体を起こし、そのままベッドから雷太の腰にしがみつく。
「雷太……。俺、雷太じゃない誰かとどうにかなるくらいなら、死んでやるって思って……。そう考えたら本当に急に眠くなって、体の力は入らないし次第に頭も体も寒くなって……。ウサギは死にたいと強く願った時、本当に心臓を止めることができる迷信とされている特異能力があるんだ。まさか……、まさか本当にこんなことになるとは思わなかった。……ごめんなさい、ごめんなさい、雷太。俺、雷太のこと好きなんだ。好きなのに、大好きなのに、死にたいだなんて、そんなこと考えるべきじゃなかった……。本当にごめんなさい。もうそんなこと絶対考えない。だからこれからは本当の恋人として雷太のそばにいたい」
雪は力の入らない腕にありったけの思いを込めて雷太を抱き締める。
雪は純粋で清廉潔白な心の持ち主だ。
雷太は真っ直ぐな思いをぶつけられ、抱きつく雪の腕をやんわりと外し腰を落とす。
雪と視線を合わせ、華奢な体を優しく抱き締めた。
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