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第128話

「死なれたら困る。俺達はまだ始まったばかりなんだから。雪、大好きだ。これからもずっと一緒にいよう。……それから俺も雪に謝らなくちゃいけないことがある。実は……」 ずっと雪に嘘をついていたことがある。 雪をずっと、初めて会った時から、恋愛対象として見続けてきたこと。 雪に怯えられ、嫌われるのが怖くて言えなかったことだ。 雷太がこの事実を伝えようとした時、窓の外からダンスの曲がグラウンドだけでなく学園校舎のスピーカーを通して医務室にまで流れてきた。 雷太の言葉に耳を傾けていた雪だったが、アップテンポのリズムを刻む曲が聞こえてくると、雪の長耳がぴくりぴくりと動き出す。 (この話はまた今度でもいいか……) 「雪はダンスやりたいか?」 「うん、もちろん!」 雪がこの日をどんなに楽しみにしていたか知っている。 やらせてやりたいのは山々だった。 しかし体の方がやはり心配で無理はさせたくない。 「だがまだ少し休んだ方が……」 「平気平気!雷太に抱き着いたら、体が軽くなった。もう何ともない」 雪はベッドの上へ立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ねて見せる。 血色のよい頬の色を取り戻し、さっきまで死にかけていたとは到底思えない驚きの回復力だった。 「けれど……」 雷太が雪にまた今度にしようと提案しようと口を開きかけた時、ベッド脇のカーテンが開いて養護教諭が顔を出した。 怪我人が続出の為、意識が戻ったのであれば寮でゆっくり休むようにと言い渡されたのだ。 ダンスを諦めきれない雪は、ちぇーっと言って唇を尖らせた。 雷太と雪、2人揃って医務室を出ようとしたその間際、雷太にこっそりと養護教諭が耳打ちをした。 「ウサギの性欲は獣人一だぞ。優しくしてやれよ」 と。 雷太は暫し、体を硬直させた。 どういう意味だ。 いや、雪は病み上がりだぞ……と雷太は頭をぐらぐらさせる。 「雷太?」 「ん?」 「どうせ休むなら俺、雷太のベッドで休みたい。あのベッドは大きくて好きだ」 理性をぐらつかせる雷太の腕に雪は腕を絡ませて頬を寄せ、雷太を更に困らせる。 「俺のベッドで寝るということは、何をされてもおかしくないということだぞ、雪。雪を前にするとどうやら俺はケダモノになってしまうらしい」 雪は一瞬きょとんとした表情を見せ、その後ふふっと笑った。

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