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第129話

「いいよ。……俺、雷太になら襲われてもいい。意識を無くす前に俺思ったんだ。死ぬ前に雷太とセックスしておけばよかったーって」 「セッ……」 明け透けな雪の話を聞いていると、獣人一の性欲の持ち主というのもあながち嘘ではなさそうだと思ってしまう。 「だから、してもいいよ」 「……わかった」 頬を赤く染める雪と中央棟を出て、東雲へ向かう。 道中雪が鬣犬の手下達はどうなったのかと口にした。 「あいつらどうなったの。やっぱり雷太のビリビリした空気で一発ガツンと黙らせてやったのか?」 「いや、あの場に鬣犬の手下が関与していると知り、鬣犬にも第2体育倉庫へ同行してもらったんだ。あの男が誉められた奴ではないことは知っていた。けれど今回のことは許せなかったらしい。鬣犬はその場を暴力で支配し収集をつけたのだと思う」 「そうだったんだ。あの人、めちゃくちゃ悪そうだったっけ。でも……雷太と一緒に俺を助けてくれたんだな。それには感謝してる」 この件に鬣犬が直接関与していなかったのは意外だった。人は見掛けによらないとはよく言ったものだ。 しかし、雪の純粋な感謝の気持ちが鬣犬に向けらるなど、勿体無い。 元々鬣犬の教育が悪いからあんな事が起こるのだ。 雪の手助けに加勢したからといっても雷太が鬣犬に対して醜悪な印象しか持てないのは、鬣犬が雪に興味を持っているからだ。 マーキングだって意味がないと今回のことでよくわかった。 だったら今後いつ手を出されてもおかしくない。 「感謝するのは勝手だが鬣犬には近づくな。ハイエナは危険だ」 「わかってるって。そんな怖い顔すんなよな」 雪が頭をこてっと雷太の腕に傾ける。 そして歩きながら聞こえてくるダンス曲に合わせて、ステップを踏み始めた。 軽快にステップを踏みながら前進する。非常に器用だ。 「雷太、この曲の振り付け知ってる?」 「あぁ。一応覚えているぞ。うちの烏合とそっちの小鳥が共同で考えてくれた振りつけだ」 「へぇ。そうなんだ!じゃあ、教えてよ!踊りながら雷太の部屋まで行こう」 「仕方ないな」 雷太は苦笑いして雪と一緒にステップを踏んだ。 ステップを踏みターンして、手を合わせて打ち鳴らす。 2人の耳も尻尾もゆらゆらと楽しそうに揺れている。 単純な動作の繰り返しだったが、そこはまるで2人だけの舞踏会のようだった。

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