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only you're there

窓の外では真っ白な雪が降っている。 学園の外は普段から森の静けさに包まれているが、いつもは聞こえる自然の音も雪に掻き消され聞こえない。 いつもよりしんとした寮の部屋。 雪は優也の声で目を覚ました。 「うー、寒い……」 「……ゆうや?」 「ごめん。起こしちゃった?あまりに寒いから目が覚めたんだ。暖房入れるね」 「うん……今、何時?」 「5時。今日は休みだしゆっくり寝てなよ」 「うん……」 優也が寒さで起きた理由がよくわかる。確かに今日は非常に寒い。 雪は再び二段ベッドの上段で布団を頭から被る。 黒い長耳だけが布団の端から飛び出している。 (あれ。今日何日……?) 寝ぼけた思考が徐々にクリアになっていく。 雪は布団の中で今日すべきことを思い出した。 「あ!!!」 「え、なに?」 雪がばっと上半身を起こすと優也が驚いた顔をして雪を見ている。 「優也!お願い!今日、町に下りるの付き合って」 「今日?」 「うん。今日しかもう買い物に行くチャンスがないんだ」 「買い物?」 「うん……」 「山王会長に一緒に行ってもらえば」 「僕はパス」と優也はそう言いながら窓辺のカーテンを開けて見せた。 「見て。すごい雪だよ。今日は特別寒いしこの天候で山を下りるのは無理だ。帰りだって上ってこなきゃいけないし。その前に間違いなく許可が下りないよ」 「え……!雪!?」 雪は布団をぱっと剥ぎ棄てて二段ベッドの梯子を下りる。 窓へと駆け寄り窓ガラスに両手をぴたりとくっつけて外の様子を窺った。 「お、すげー降ってる。雪合戦できるじゃん、優也!」 「そうだね。って、買い物の話しはどうなったの?今日しかチャンスがないとかなんとか」 「あぁそうそう。雷太にクリスマスプレゼント、何か買いたかったんだけど。確かにこの雪じゃ外出許可出ないかもな」 雪の心情を表す様に長耳がしゅるしゅると下へ垂れ下がる。 週が明けた次の木曜日。恋人同士となった雷太との初めてのクリスマスが訪れる。何せ生まれて初めてできた恋人だ。忘れられない特別な日にしたいと思い入れも強い。 「その気持ちだけでも十分会長は喜ぶと思うよ」 「そうかな」 暖房が次第に効いて部屋が温かくなり、雪の無茶な願いも思い断たれたところで、優也はほっと溜息を吐く。

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