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第134話

「何をプレゼントしようと思ってたの?」 「町でしか買えないような、上等な肉……」 「肉?」 「そう。ラムとか……」 そう言って雪は優也をじっと見詰める。 「僕ラムじゃないからね……。肉なら兎肉の方が高級品だと思うよ」 「……冗談だよ」 「あたりまえでしょ」 「……」 変な間が続いて雪は頭を抱えしゃがみこんだ。 「はーっ、何あげればいいのかマジでわかんない!!」 まさか草食獣人である自分が肉食の頂点に君臨するライオンの雷太と恋人同士になるなんて誰が想像できただろう。 肉食と目が合えば殺されるんじゃないかとびくびく怯え、警戒しながら生きてきたのに。 まだ十数年しか生きていないが、人生どう転ぶかわからないものである。 クリスマスは次の木曜日。町へ下りてプレゼント探しをするなら今日、この日曜日しかなかった。その選択肢も完全に消えた今、自分ができることは一体何なのか、雪はパジャマ姿のまま頭を抱え唸り続ける。 「だから物にこだわらなくても大丈夫だって。僕もうひと眠りするし、今日は約束あるから雪も自由にして。じゃ、おやすみ~」 ふあぁ……と可愛らしい欠伸を手で押さえ、優也は再びベッドの中へ戻って行った。取り残された雪は眠気などとうに吹き飛び、今すぐにでも外へ出て雪の中を駆けまわりたいくらいそわそわとしていた。 休日の雪。雪合戦。来週のクリスマス。雷太と過ごすクリスマス。 色々なわくわく要素が雪の中でぽんぽんと楽しそうに弾んでいる。 しかし恋人同士のクリスマスにプレゼントは付き物じゃないのだろうか。 雪の頭にはお洒落なショッピングモールでウィンドーショッピングをして、イルミネーションの輝く並木道を歩き、海辺の夜景を見て、ちょっと大人のディナーをして、プレゼントを交換して……と、クリスマスと言えばこれだ!と言わんばかりの鉄板デートシチュエーションが繰り広げられている。 この辺りに海はないので海辺の夜景は無理なのだけど。 優也は物にこだわる必要はないと言うけれど、それは優也の考えであってそれが本当に一般的な恋人同士のクリスマスに通用するのか甚だ疑問だ。 「……みんなどうしてるんだろ。調べてみるか」 優也を疑うわけではないが、雪は他の友人達にクリスマスをどう過ごすか聞いてみることにした。

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