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第140話
そうは思ったが、少しでも雷太と恋人らしい"待ち合わせ"がしたくて、雪はその提案を頭の中で取り下げることにした。
雪はクローゼットからデニム地で縫製されたダウンジャケットを取り出して着込む。
白い手袋をダウンのポケットに突っ込んで、早々と部屋を出た。
寮内の食堂へ向かうと、入り口には昼食時間に向けて準備中の札が下げられていた。
しかし食事をするためではなく、自分は空き瓶回収にきたのだと準備中の入口を堂々と開け放った。
空き瓶がないか尋ねたところ、収穫は上々。
雪の手には刻みピクルスが入っていたとされる縦長の空き瓶が5本、小さな段ボール箱に入れられている。
「雷太!」
「雪、おはよう」
「おはよう……?って、もう朝じゃないぞ」
「そうだな」
一週間ぶりに見る雷太が緑青の前で立っていた。
手足の長い長身に、金の髪、金の三角耳。
表情は穏やかに雪を見て微笑んでいる。
美形でスタイルも抜群なのはわかっているが、黒のダウンジャケットにジーンズを身に着け、積雪の為に履いたごついブーツ姿の雷太は、雪の目に掛った恋愛フィルターのおかげで一週間前よりも更に恰好良く、輝いて見える。
何気ない挨拶一つとっても、雪は照れてしまってしどろもどろだ。
「随分いっぱいもらってきたな」
雷太が雪の手元を覗き込む。
「うん。刻みピクルスが入ってた瓶なんだって。よく洗ってないから使う前に洗ってねって言われた」
「そうか。貸してごらん」
雷太も腕に紙袋を提げていて、その中に空き瓶が入っているのが雪から見えたのだが、雪の荷物を更に持とうとしてくれる。
ここは自分の彼氏らしい振舞をするべきかと雪も同じことを口にした。
「じゃあ雷太の荷物持ってやるよ。貸して」
「ん……?まぁいいか。じゃあこっちを頼む」
「うん」
なぜが手持ちの荷物を交換し、雪と雷太は並んで中央棟へと歩き出した。
「すごい雪だな。雪じゃなければ町にでも下りて少し早いがクリスマスを一緒に祝えたのにな」
「俺も同じこと考えてた!町に下りたいなって」
雪の目的はクリスマスの前祝ではなく雷太へのプレゼント探しだった訳だけれど。
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