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第141話

「町に下りるのは無理だが、一緒に過ごすことはできるぞ。雪、イブの夜、部屋に来ないか?」 部屋へ来ないかと誘われて、以前交わした雷太との情交を思い出す。 雪はさっと頬をピンクに染めた。 「行きたい。けど同室の人は?」 「蛇塚か。あいつは誰かと約束があるとかでその日は帰らないらしい」 前にもこんなことがあったなぁと思い返す。 雷太と同室の蛇塚とはどういう獣人なのだろう。 「その同室の人、よく外出するよね」 「まぁそうだな。意外とモテるらしいし、誰か恋人でもいるのかもしれないな」 「ふうん……」 肉食組の生徒達は草食と違って風紀が緩いのだと聞いている。 草食にも実はあの人とあの人が?という恋愛事情があるのだから、肉食はもっと乱れているのでは?と想像してしまう。 「そうそう、恋人と言えばさ……」 雪はそこまで言って辺りをきょろきょろと見渡した。 周りに自分たち以外誰もいないことを確認して雪は口元を片手で覆い内緒話のポーズを取る。 「ん?」 「象山と1年の小鳥、付き合ってるみたいなんだ。雷太は知ってた?」 「いや、初耳だ。そうだったのか。驚きだな」 「だよな。あの2人はクリスマス一緒にケーキ食べるんだって言ってたけど、みんなクリスマスは何するんだろ」 「雪は去年のクリスマス、何をしていたんだ?」 「去年は娯楽室でパーティしたよ。お菓子食べてジュース飲んでゲームして遊んだなぁ」 「そうか。楽しそうだな」 「そうだな。バカ騒ぎするのは面白い。雷太は?」 「俺は生徒会として肉食組が羽目を外さないよう見回りと監視の仕事をしていた」 「え……、大変なんだな生徒会って」 自分が小さなクリスマスパーティを仲間と楽しんでいる最中、雷太は見回りをしていたのだと言う。 自分だけが楽しんでしまいごめんなと、申し訳なさがじわじわと胸に広がる。 「例年1年生の仕事だから、今年は紅に任せるつもりだ。ちゃんと雪と一緒に過ごせるようにするよ」 「あ、うん」 雷太は雪を見て微笑む。優しい微笑みとは対照的に、セックス中の雷太は肉食の顔をしていたな……と何故か急に思い出し、雪は一人頬を赤くした。 (あ、そういえば、プレゼント。どうしよう) 雪はすっかりプレゼントのことを忘れていた。 イブの約束を取り付けながら2人は並んで歩き、もう中央棟は目の前だ。

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