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第143話

体を折り曲げていた牛島をやんわりと制し、代わりに雷太がどうしてここへ内緒で来ようとしていたのか、その理由を話し始めた。 「実は雪には内緒で、雪へ贈るクリスマスプレゼントを作ろうとしていたんだ。町へ下りて何かを買ってくるよりも、唯一無二の物を贈りたくてな。羊ケ丘だったら雪と仲がいいし、雪に何を贈れば喜んでもらえるのか相談させてもらった。そしたら身近な材料でクリスマスのオブジェが作れると聞いて。これは雪を驚かせようと思ってしたことだが、今は雪と一緒に作る工程を楽しみたい」 「……うん」 雪の胸に安堵が広がり、同時にじわじわと喜びも湧いてくる。 雷太は雪に唯一無二のものを作って所謂サプライズプレゼントをしようとしていたのだ。 「黙っててごめんね雪」 「うん。いいよ。俺もちょっと心の狭い男だった。変な目で見てごめんな」 「気にしないで」 「うん。ところで牛島はなんで一緒に?」 「あぁ、牛島は科学部所属だから色々知ってると思って相談してついてきてもらったんだ。部員は休日もこの部屋を使えるしね」 「牛島が科学部!?すげぇな」 雪の言葉に牛島が照れたようにして頭をかく。 牛島は長身で彫りの深い顔立ちをしたウォーターバック。 生徒会に所属しながら科学部にも所属していたとは。運動部じゃなかったことに驚きだった。 お互いの誤解が解けたところで、プレゼント作りが始まった。 雪は雷太と共に空き瓶を洗う。 その傍ら、優也と牛島が塩化アンモニウムと水を軽量し鍋に入れ火にかける。 雪の後ろでガスコンロを点火する音がした。 「鍋に火をかけて、料理でもすんのか?」 「まぁまぁ、見てのお楽しみっす」 雪と雷太は牛島の指示で別の鍋に洗った瓶を入れ加熱した。 「そろそろ温まりましたかね」 「うん。この瓶の中に飾りを入れればいいの?」 優也が問うと牛島が「はいっす」と答え、それを聞いた雷太はジーンズのポケットから小さな動物の置物を取り出した。 雪はそれをじっと見つめる。 瀬戸物でできたウサギとライオンだった。 雷太がコンロの火を止め、それぞれが温めた瓶の中に好きな飾りを入れていく。 優也は少し大きな雪だるまの置物を、牛島は都会的なビルの小さな模型を入れる。 そこへ鍋で溶かした塩化アンモニウム液を流し込む。 「これで完成っす」 「え?これで……?」 アツアツの薬液に浸した瓶の中の置物を眺めるだけなのか?と雪は首を傾げた。

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