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第148話
「雪がプレゼントそのものになるっていうのもひとつの手だよね」
優也はリボンを首に巻いた雪を見て、にこりと微笑む。
いつも優しく頼りになる優也の微笑みが心なしか不敵なものに見えるのは気のせいだろうか。
「俺がプレゼント……?」
「うん。そばにいるだけで満たされるってことを体で感じてみたら?」
「そばにいるだけで……」
クリスマスという恋人同士にとっての一代イベント。
そんなことで雷太は果たして本当に喜んでくれるのか。
「絶対うまくいくはずだよ。騙されたと思って試してみて」
「優也がそこまで言うなら、……やってみようかな」
「うん」
雪は優也に背中を押されるようにして、その案に乗ることにした。
そして、クリスマスイブがやってきた。
チラチラと雪が舞っている。
雪が憧れていたホワイトクリスマスだ。
内線電話で雷太から連絡をもらった雪は、パジャマに下着、歯ブラシ、そして優也からもらったクリスマスカラーのリボンが入った手提げを肩に掛け、真っ白なダウンを羽織り、緑青の入り口に立ち雷太を待っていた。
緑青から東雲までの道中何かあったら困るからと、雷太が雪の送迎を申し出たのだ。
何もないし、何かあったとしても自分は脚が速いから大丈夫だとそう言ったところで、雷太は全く聞く耳を持たなかった。
心配性だなと思う反面、それが嬉しくもあり、自分達は恋人同士なのだと実感させられる。
雪は真っ白な息を吐きながら、そわそわとして落ち着かない。
雪が足元に積もった雪を器用に集め、雪山を作り始めたところで声を掛けられた。
雷太だ。
黒いダウンが大人っぽくて似合っていると雪は思う。
「雪、待たせたか?寒いのにすまんな」
「ううん」と雪が首を横に振り、二人は並んで歩き始めた。
「確かに寒いけど、俺雷太よりは寒さに強いと思うから大丈夫。その……ネコ科って寒いの苦手なんだろ?だからむしろ、ここまで来させてこっちこそごめんって感じだよ」
「ん?雪、それは誤解だ。寒さに対する耐性は人並みだと思うぞ。ただ、筋肉質な体の者が多いから、寒さで体が多少硬くなったりすることはあると思うが。だが俺は全然なんともない。だから気にすることはないんだぞ」
「そうなのか?だったらいいんだけど」
雪はほっとして雷太を見上げて微笑む。
すると雷太は口元に手を当て、雪をちらりと見てから視線を反らす。
雷太の頬が赤い気がした。
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