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第153話

目に焼き付けておきたいだなんて、今生の別れでもあるまいし─。 と、心のどこかで思っているのだが、雷太がそう言うなら仕方ないと雪は胸元に置いた手をそろそろと外した。 「……」 「いい子だね、雪」 雷太はそう言って雪の黒髪を時折長耳の付け根を掠めながら撫で付ける。 「んっ……」 耳の付け根は雪の弱い部分であり、そこを通う神経はどういうわけか下肢の快楽に直結している。 力が抜けていく感覚。 このまま雷太の好きにして欲しい、めちゃくちゃに抱かれたいと、雷太が相手だと自分の雄の部分が弱くなる。 でも、自分だって雷太に触りたい。 雪は耳を弄られ胸を視姦された状態で、腰と丸い尻尾をフルフルと震わせながら、たどたどしく指を動かし雷太のシャツのボタンをやっとの思いで外すことができた。 そして雷太のシャツの合わせを開く。 そこには当然のように素肌が待機していると思っていたが、中にはもう1枚、アンダーシャツが胸元を覆っていた。 散々乳首を弄られて、自分がされたように雷太にしたいと思っていた雪の野望が砕け散る。 体に力が入らずもう限界だった。 腰がくにゃりと折れて、雷太の胸にすがりつく。 「らいた……ぬいで……」 雪が舌足らずな口調で雷太に強請った。 すると次の瞬間には視界がくるっと反転し、背中が柔らかいベッドに沈み混んだ。 目の前には自分を上から熱い眼差しで見詰める雷太と、部屋の白い天井。 雪は雷太の早業で、ベッドに押し倒されたのだ。 雪の腰を跨いで自分を見下ろす雷太から、もう目が離せない。 雷太は清潔感ある白いシャツを床へ落とし、腕をクロスさせながらアンダーシャツを脱ぎ捨てる。 瑞々しい弾力のある肌が露になり、6つに割れた美しい腹筋と、なだらかに盛り上がる大胸筋が雪の前に晒された。 衣服を取り去ったことで、雷太の香りがむわっと濃厚に辺りを漂い、雪は視覚と嗅覚から雷太の強い雄を感じて目眩を起こしそうだった。 雷太はなんて美しく強いライオンなんだ。 雪は蕩けてしまいそうなうっとりとした眼差しを雷太に向けていたが、すぐに唇を塞がれた。 舌で唇をノックするようにつつかれてそれに応える。くちゅくちゅと水温と音を立てながら、お互いの口を舌が出入りした。 「ん、ん、ん」 粘膜の擦れ合いが気持ちよくて、雪は何度も甘い音を鼻から漏らす。 キスを交わしながらいつの間にか雪のベルトが外されチノパンのファスナーも下ろされる。

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