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あれから(2)

「お前、なめてんの?」   バスに乗り込もうとした瞬間、尾崎は宇津木を引き止め、怒鳴りつけた。 「……別に、尾崎先輩のこと、なめてませんけど」 「俺の要求はストレート。お前が投げたのは魔球とも言えるナックルボール。俺じゃなかったらあんなボール、とれるわけがねぇ! 二塁三塁埋まってたんだぞ? 打たれたらサヨナラだったんだぞ?」 「だから、打たれなかったじゃないですか」  バスの入り口で口論されては、他の部員も気まずい雰囲気になる。 「おい、宇津木。なにキャプテンに口応えしてんだよ」  宇津木と小学校の頃から野球をしている田中が、仲裁する。それでも口論は止まらない。 「ほんと、尾崎と宇津木ってなにかと衝突するよな?」 「犬猿の仲……ってやつ?」  部員の中ではそう思う人も少なくない。 バスの中がざわざわとし始めたと同時に、宇津木の腕をぐいっと引き寄せた尾崎。 「うわっ……」   とん……と、尾崎の逞しい胸に、宇津木の体が吸い込まれた。 「ちょっ、尾崎先輩っ?」 「的場監督、今日はもうこれで解散なんですよね? 俺らちょっと話し合ってから帰るんで、そのままバス、いっちゃってください」 「え? おい、尾崎っ?」   監督の的場も吃驚するほどだ。 「では、お疲れ様でした!」  深く頭を下げて、宇津木の首根っこを掴み、球場へと戻って行った。

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