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第4話
「怪我が治るまで帰らなくていいそんな家!」
怒りに任せて出た言葉。
「いやいや、そんないきなり…」
少年は苦笑い。
「いきなりだろうとなんだろうと、もう決めたから」
有無を言わせぬ口調で腕を組み言う。
「オレは怪我してるやつほっとくことは出来ないんだよ!」
もちろん怪我人はほっておけない性格ではあるが…
この少年だから、助けたいという気持ちも確かにあって…
「いや、でもこの家の人は?勝手に決めちゃまずいだろ?」
結構冷静な質問を投げかけてくる少年。
「うちにはオレしかいないから問題なし!」
「えっ?なんで?」
こんなでかい家に一人!?
かなり驚いている少年だが…
「そんなことはいいから!とりあえず、家に戻って学校で必要なもんとか家のやつに見つからないように取ってこい!」
そう、どんどん話を進めていく。
「え~」
困ったふうに首をかしげる。
「家遠いのか?」
「ううん、メチャ近い」
「…え」
「そこのアパート」
そう言うと、少年は窓の方に歩いていき、裏向かいにある小さなアパートを指差す。
「マジで?」
こんな綺麗な少年が裏向いに住んでたなんて今まで全く気付かなかった。
驚きながらも、近くならすぐ荷物も取りに行けるな、と話を進める。
「とにかく、今日からここに住む!OK?」
「どうしても?」
「どうしても!」
やはり有無を言わせぬ物言いで答える。
「ん~仕方ないな、ま、家近いしすぐ帰れるからいっか」
案外楽観的な少年。
アキラの提案を簡単に了承する。
「帰らなくていいよ!ったく」
虐待されるのわかってる家になんか!とまた少し怒ってしまう。
「あんたって優しいな、見ず知らずのおれに手当したり…」
そんな様子を見て、柔らかく微笑んでそう伝えてくる。
「ば、何言ってんだよ、怪我人見たら当たり前のことだろ!」
少し気恥ずかしくなりツンと言い返してしまう。
「ふ、ありがと」
「てか、名前聞いてなかったな、オレは楠木アキラ、高1」
遅ればせながら自己紹介してみる。
「へぇ高校生なんだ!」
「え?お前もじゃないのかよ?」
背丈は自分と同じくらい、面長のスラッとした体格で、同じ高校生くらいに見えるのだが…
「おれは、撰都ルダーク、呼びにくいからルードでいいよ!小5!」
「は?えっ…小学生??」
どう見たって小学生には見えない…
「おう!バリバリの小学生!みんなに驚かれるけどな!」
「そっか…小学生の割にはでかいなお前…」
「アキラは小さいよね」
すると悪気なくそんな言葉が返ってくる。
「お前なぁ…」
これでも少しはお前に勝ってる!と顔を歪めるアキラ。
「ごめん、でもすごい綺麗な男子だと思った、つか仲間?」
髪の色と目の色が違う仲間。
ルードは蒼い目に、透き通るような金髪のショートヘア…アメリカン系の顔立ちだ…
アキラも色白の肌に淡い栗色の髪…瞳は深い緑色をしている。一見、日本人には見えない。
さらに整った小顔と結んではいるが肩まである髪は余計男らしさを失わせている。
「お前のほうが綺麗だよ絶対」
「なんで?」
不思議そうに首をかしげるルード。
「心がな!」
確信をもって伝える…
言えないようなバイトしてる俺なんかより…何倍も綺麗。
「??」
そんなこんなで唐突に二人の生活は始まった。
ルードを虐待から守るためという名目の下…
秘めた心を隠して生活をともにするアキラだった…。
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