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《裏の仕事》

夏休みも終わり、9月のなかばの日曜日。 あいにくの大雨だ。 「うわっすげー雨だなー」 日本人離れした色白顔で肩まである栗色の髪をひとつに結んだ、一見美少女と間違えてしまいそうな姿の少年は玄関のドアを開きつつ言葉にする。 「はい、傘!今日も?」 後から傘を手渡すのは、背は同じくらいだが、こちらはあきらかに日本人の顔とは違って、透き通るブロンドのショートヘアーに綺麗なライトブルーの瞳、美少年だ。 「あぁ、今日も遅くなると思うから先に寝てろよ」 笑顔を向けて即答。 「うん、わかったよ!晩メシいつものトコ置いとくから」 「さんきゅ!出来るだけ早く帰るからな、じゃ…」 「行ってらっしゃい!アキラ!」 無邪気に手を振り送り出してくれる。 それに応え、重い足どりで家を後にする。 その人物の名は、楠木 晃。 そしてそのアキラを送り出したのが、撰都ルダーク、通称ルード。 二人は訳あって一緒に住んでいる。 「……」 後にした3階建ての自宅を振り返り思う。 ルードと一緒に暮らす訳… それは、ルードが母親からひどい虐待を受けていたから、オレが助けるためにかくまっている…。 けど、そんなのは、ルードを納得させる言い訳。 本当はあいつのコトが好きだから、そばにいたいから住んでいる。 そのことはまだルードには言えてない。 でも、いつかは言う。 嘘はつきたくないから。 ルードは、身体は虐待されてボロボロになってるけどでも、人をひきつける綺麗な心を持ってる… ツライ現実を必死に受けとめて、強く生きてる。 オレみたいにヒネくれずに、そんなトコには尊敬さえ感じる。 本当、5才も年下とは思えないくらい…。 まぁ、こんなバイトしてるオレなんかルードに合わないけど…。 で、今からそのバイトがあるんだよな…。 やめれるものなら今すぐやめたい。 …のが本音。 オレのバイトは法にかなり触れてるヤバイ仕事。 世間では知られていないけど、言えば「半強制少年売春」ってことになるんだろうな。 ヤロー同士でヤって映像にして売ってる。 成人同士なら他にもたくさんあるんだろうけど…うちが扱っているのは未成年… そこが特殊で、裏の会社と言われる由縁だ…。 完全会員制秘密絶対保持の会社だから誰でも働けるわけじゃない。 選ばれた人間だけ、オレはその一人に選ばれてしまったってコト。 会社名はBOUS… 表むきは、スポーツ用品店のBOUSスポーツ、店の3階から上が裏の店、二階は、店員専用寮になっている。 そのBOUSへたどり着くアキラ。 「おはようございます」 一階の店のカウンターに座っている中年の男に声をかける。 「あぁ、サクちゃん、おはようさん。もう相手来てるから三階上がってね」 にっこり愛想よく指示するのは、BOUSの総責任者である加藤社長だ。 「はい」 加藤社長は、従業員に手を出さないし、人当たりは悪くないんだけど、頑固者で怒らせるとかなり恐い。 アキラは返事をしてIDカードをもらい奥のエレベーターへ消える。 「ふぅ」 短い溜息さっき社長がオレのことサクちゃんて呼んだのは、仕事用の偽名がサクヤだから、この店に入るとオレは、アキラからサクヤへ変わる。 それは、ここで働いているヤツ全員が持っている。 エレベーターが、3階で止まり、扉が開く。 出るとすぐ前にロック式の自動扉があり、サクヤはそれへIDカードを通し中へと入る。 フロアーに入ってすぐ声をかけられるサクヤ。 「よう!サクヤ久ぶりだなぁ」 「おはようッス。ナギセンパイ」 一応、会釈しながら横を通りすぎようとする。 「まぁ待てよ!今日の撮影何時くらいに終わりそう?」 アキラの腕をとり、引きよせつつ聞いてくる。 「さぁ?多分長引くと思うんで相手にはなりませんよ」 そうきっぱり断る。 「ちぇっ残念だなー」 などと言いつつ行動は正反対。 ナギはサクヤを引きよせたまま唇を狙ってくる。 「なっナギセンパイ!オレ急いでるんスから!離してください」 すかさず避けながらサクヤは抗議の声をあげるが、行動を止める様子はない。 「キスだけだって」 「ッ……」 抵抗してもナギの背は、サクヤより軽く20㎝は高い。 (もう…ッ) 不機嫌に諦めようとしたとき、すぐ近くで声がする。

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