6 / 82

第6話

「おい、ナギ!入口の前でなにやってるんだ」 「あ、ヤマトっ何って見たまんま…」 「そう言う意味じゃないだろ、強制は、規律で禁止されてるだろ」 「あーっそんなん守ってんのヤマトぐらいだよ」 (…同感) 「ナギ」 「わーったよ、ほら行っていいぜ!サクヤ」 「えっと、ありがとうございました」 中には規律に厳しい先輩もいるわけで… サクヤは、ヤマトに礼を言い、ミーティングルームへ急ぐ。 今みたいなことはここでは日常茶飯事。 ヘタすりゃ廊下でヤッてるなんてことも有。 さっきは運がよかった。ヤマトセンパイが現れてくれたから。 「すみません!遅れました」 「あっ!サクちゃん、こっち!ミーティング始めるよっ」 撮影助手のルキセンパイに呼ばれイソイソと席につく。 台本を手に、今日撮りは、またも強姦の話。 (はぁっ…) 心の中で大きな溜息をつく。 相手は、ユウか… (ふぅ…) またも溜息。 苦手なんだよなぁ… 他の性優みたいにベタベタしてこないし、あんまりしゃべってくれないし… 嫌われてんのかもオレ。 「流れはだいたいこんな感じ、わかんないことあったらまた聞いて。OK?」 『はい』 ルキは、オレたちの返事を確認して部屋を後にする。 部屋には、サクヤ(アキラ)とユウ(みずき)が残される。 「…今日よろしく、はじめよ」 サクヤはユウに話しかける。 「あぁ、よろしく」 目線を微妙にそらしつつ答え、台本を開くユウ。 始めると言ってもいきなり撮りはじめたりはしない。 まず撮影者の息が合わないとダメなので、時間をかけてミーティングをする。 中でも役者は動きの細かい所まで把握しておくため打ち合わせは欠かせない。 終始事務的に、台本のチェックをするサクヤとユウ。 はたから見ると、これからHする二人にはとうてい見えないだろう。 「…ユウってさぁ、なんでこの仕事してんの?」 なんとなく気になり、そらされるの覚悟で聞いてみるサクヤ。 そっとユウの瞳を覗きみる。 ユウは今日も顔に少し殴られたようなあとがある。 「おまえは…」 「え…?」 言い詰まったユウの言葉にサクヤは聞き返す。 また、目線をそらして続けるユウ。 「おまえは、どうしてこの仕事を続けていく事を選んだ?」 「オレの質問が先!答えてから」 サクヤは強気な態度でユウにむかって言う。 「……俺は、金のためだ」 「金?…そう、だからオレの働いてる理由がわかんねーって言ってるんだな」 「…おまえは俺と違って金に困ってはいない」 サクヤは少し考える様子で唇に指を触れさせ首をかしげる。 サクヤの行動を見つめながら答えを待つユウ。 「うーん、なんでだろうな、ただ、淋しかったからかな…」 「淋しい?」 「そう…」 ここで働いている人は普通じゃない境遇育っている人ばかりだ。 だいたいが、金に困っていたり、身体的に虐待されてたり、その点、オレは医者の息子で大きな家に住み、金には不自由しないし、親から殴られたことなんかない。 世間から見たら、羨ましがられるような家。 ……外面は。 サクヤは、前髪をさっとかきあげ、不意にユウの顔の傷痕に触れる。 「これ、どうしたんだ?親父にやられた?」 「っ!!」 急にサクヤに触れられドキッとして、身を引くユウ。

ともだちにシェアしよう!