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第7話
「ユウも苦労してないオレの事が、気に入らないんだろ」
綺麗なダークグリーン、見透かすような目つきで、ユウをみる。
「……(ちがう)」
どぎまぎと目をそらしてしまう。
心の中で否定する。
ユウの心は、サクヤのそれとは正反対の気持ち…
気付いたらサクヤを目で追っている。
こうして傍にいるだけで、うれしい。
俺はサクヤの事が……。
けれど告白は出来ない言ってしまえば、もうBOUSで演技ができなくなりそうで……それに自分には告白する勇気も自信もない。
この思いは心の奥底へ沈め諦めるよう自分に言いきかせてきた。
これからも……。
そんなユウの心の動きなど知るはずもなく、サクヤは…
「ま、イイけど」
とそっけなく言いまた、台本に目を戻す。
打ち合わせを、終えて休憩をはさみ、いよいよ撮影ルームへ、ここまでくるのに 2時間、現時刻夕方5時。
今からリハーサルを約3時間ほどかけてして、本番は約2時間で撮り終える。
なので帰る時間は夜10時半を過ぎてしまう。
「サクちゃん!そこの位置に気をつけて!もっと前…」
「はい!」
今日の撮影監督は助手歴7年のトオルセンパイ、けっこう厳しい人だ。
助手って言うのは、現役性優を卒業しても社会自立できない人が、BOUSで撮影助手として働いている。
現役は20才の誕生日までで、BOUSを卒業する決まりになってる。
卒業後もそっち系の店なんかに勧誘されて就職する人もいるみたいだけど…。
「はい、ユウちゃんOK!衣裳、メイクにいってて!」
「はい」
トオル監督に言われユウは早々にリハを抜ける。
「……(ムカッ)」
ユウの奴、本職でいけるんじゃないかってほど、演技がうまい…
ムカつくけどヘタよりいいから。
オレはどうも自分以外の人格を演じるのは抵抗あるんだよな、まぁオレが受専門だから合わない役ばかりなのかもしれないけど。
受専門とは、女役しかやらない性優のこと。
反対に、攻専門は男役のみの性優のこと。
あと受攻両方こなす性優といる。
両方する奴が人数的には一番多い。
今日の相手のユウもそうだ。
「はい、OK!サクちゃんもメイク行って!悪いけど休憩なしね!」
「はい…」
ユウから遅れること40分、サクヤもメイクを終えて出てくる。
先にメイクを終えていたユウは、休んでいる。
「遅くなってスミマセン」
一応、待たせてしまったのでユウにバツの悪そうな顔で、ぼそっと謝る。
そしてすぐ撮影ルームへ行ってしまうサクヤ。
「……」
その後ろ姿をみてユウの顔にかすかに笑みが浮かぶが、すぐに消える。
これから演技であってもサクヤを手荒に扱い、犯す…。
毎回サクヤとの撮りは…辛い。
心とは裏はらの行動を、とらなくてはならないから…。
せめて、NGを少なくして早く終わりたい、サクヤの負担になりたくないから…
そんなことを思いサクヤに続いて撮影ルームへ行くユウ。
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