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第8話
本番撮りの段階になって助手は、4人に増える。
土日は撮影が最も多い曜日なので助手はかけもちで働いている。
「じゃ、シーン1、シーン3、シーン2分けて撮るから、二人ともOK?」
『はい』
「はい本番シーン1 001スタート!」
トオル監督の声で撮影が始まる。
撮影はシーン1(導入)シーン3(話のしめくくり)シーン2(内容・本番)の順に撮っていく。
シーン2を先に撮るとシーン3でNGが増えるからと言う理由らしい。
雰囲気づくりが難しいんだよなぁ…。
「ッ嫌!やめてっツっ」
学ラン姿のサクヤを教室の壁へと抑えつけ、白い首すじへナイフ突きつけるユウ。
「動くな!死にたいのか?」
「っウ…」
ふるえるサクヤの動きを封じたまま耳元で低く囁き、ナイフを頭の後ろへ滑らせ、髪の結び目を切る。
さらさらと肩まで伸びた髪が広がる。
ユウはそのまま、刃先をサクヤのズボンのホックに掛け上へビリッと迷いなく襟まで切り裂く。
前がはだけ素肌があらわに。
「ッ…いやだっ離してッ」
怯えきった顔でサクヤは、逃れようとするが…
「おとなしくしろっ!!」
ユウは冷徹に言い放ち、サクヤのこめかみ横5㎝ほどの位置に…
ドッ…!
大音をたてナイフを突き立てる。
「うっ…ッ」
サクヤは恐怖に顔を凍らせる。
「はい!シーン1、OK!どーしたんだ今日調子いいね」
「今日は早く終わりそうだね」
とセンパイ達の話し声で真剣な雰囲気ぶち壊し。
「ふーっマジ恐かったぜ、これ…」
ナイフを、見つつしみじみ言うサクヤ。
「俺も、恐かった」
「は?なんで?」
「……」
応えないユウ。
少し考えてサクヤは…
「あぁ、刺すかと思ったから?」
「……」
応えられないユウ、心の内で思う。
ちがう…
俺はこの役が演じきれなくなりそうで恐いんだ。
ユウからの返事を待つわけでもなく次の言葉を言う。
「次からが問題なんだよなぁNG出さないようにしないと…」
なんとかシーン3も、NG、2回出たけど無事撮り終えて…
(2回ともサクヤのNG)
後は、シーン2を残すのみ!まぁ今日は1対1だからまだ楽な方だ。
内容もそんなに濃くないし、早く終わるかも。
そう心で思うサクヤ。
「二人とも、そろそろシーン2、いいかな?」
トオル監督が呼びかけてくる。
『はい』
同時に返事をして…
「あの監督、やっぱりオレならしなしですか?」
サクヤは、期待薄に聞いてみる。
「あぁ、サクちゃんはダメだよ」
あっさり却下するトオル監督。
「やっぱり…」
がくっと肩を落とし座りこむ。
ならしとは、強姦の撮りなども受側に負担がかかるので、ぶっつけ本番でヤらずに、ゼリー状の表面麻酔剤とか使ってならして痛みを和らげること。
でもそれは、演技のできる人のみ許されるもので、オレは駄目らしい。
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