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第9話
「じゃ、えっと最後まで通していけるようにがんばって!」
トオル監督の言葉。
「サクちゃんは、位置と目線に気をつけて、ユウちゃんはリードしてあげてよ」
『はい』
返事をして二人とも位置につく。
「はい!シーン2、001スタート!」
トオル監督の声に先程までの騒雑とした雰囲気が一転し静まりかえる。
「ッ…許して…ユウッ」
「うるさいッ」
いったん引きよせたサクヤを教室の机の方へ突き飛ばす。
「痛ッくっ」
ナイフを持ち静かに近づくユウ。
迫真の演技でかなり恐い…
逃げようとするサクヤ…
その腕を取り後ろへまわしユウのベルトで、縛り拘束する。
「やッ…ィっ」
そのまま机へ頭を抑えつけナイフを目の前に突き立てる。
ドッ…
「顔にキズつけるよりここの方がイイんだろ!オマエはッ!」
言うと同時にサクヤの下半身に身に着けているモノをはぎとる。
抑えつけたまま、後ろから指を2本ほど強引に挿入するユウ。
「ッあっ、嫌ッ…痛ッぅ」
急な行動に身体をヒキつらせる…
不意にサクヤの体を放して、ユウは上服を荒く脱ぎながら部屋の角へ追いつめる。
「…お願い…許して、ユウ」
震える声で瞳を合わすサクヤ。
「…オレだけを見ていればよかったんだ!!」
「…っ」
「なぜ、裏切った!?」
サクヤの首すじを左手で抑えつけ…
「なぜだッ!!」
「ふ…っ」
問い詰められ…言葉の代わりに、その瞳から涙が零れ落ちる。
「ちッ!」
ユウは右手を振り上げ、サクヤの頬へ平手打ちを飛ばした。
平手打ちをした…はずだったがその手は、サクヤの頬をかすめただけだ。
「…ッ(えっ!?)」
台本の内容と違う動きのユウに一瞬戸惑うサクヤ。
ユウは そのまま続けようとするが…。
「カーット!ユウちゃん!何やってんの!やる気あるの?」
トオルの厳しい声が飛ぶ。
「……すみません」
静かに謝るユウ。
監督は厳しい口調…
「ったく、ユウちゃんらしくもない、単純ミス。言わなくても分かってるよね!?」
「はい」
答え、溜め息をつく。
頭で分かっていても、身体がついてこなかった。
泣いているサクヤを殴ることができない…
そんな瞳で見られるだけで苦しい。
「……?」
サクヤは、不審な顔でユウを見る。
ユウは何やってんだ?本当に。
「すまない…」
瞳が合い、サクヤに謝る。
「いや、いいけど…」
「じゃ、シーン2、025からいくよ」
『はい…』
ユウは返事をして頭を軽く振る。
完璧に、この役になりきるために。
納得できない顔つきのサクヤを見て言葉にする。
「もう、NGは出さないから…」
「えっ?ユウ…そりゃ助かるけど…」
さっきのNG見たあとだと信頼感に欠ける。
「はい、スタート!!」
監督の声に静まりかえる。
「ちッ!」
今度は振り上げた手をサクヤにHITさせる。
バシッ!
「っ痛ッいや!」
殴られた反動で座りこむサクヤ。
ユウは強引に立たせ、壁向きに抑えこみ完全に行動を支配するユウ。
壁に向いているサクヤの顔を無理やりこちらへ向かせ唇を奪う。
「ふっ…ッ」
強く深くユウの舌が口腔へ絡んでくる。
サクヤは足が砕けて座りこみそうになるが、ユウはそれを許さない。
立たせたまま後ろから指を進入させていく…
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