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第12話
シャワーを浴びに来たユウが声を出す。
「ヨシっ!」
「あ?…ユウ、なんだよ」
「やめろ…」
ユウはヨシに近づき静かに言う。
「なんで?俺の勝手だろ、やらせろよ」
ちょっとムッとしてユウの方に向きこたえる。
「……っ」
サクヤは今がチャンスと逃げだす。
「ッ逃げんなっ!!」
ヨシはすかさずサクヤの腕を掴む、が……。
「ヨシ、やめるんだ!」
ユウの少しキツイ制止を受けて一瞬、腕の力が抜けるヨシ。
サクヤは走ってシャワー室へ逃げる。
「わかったって!そんな怒るなよ、ユウ。まだ規律やぶってねぇだろ…」
「ヨシ…」
「でもなぁユウもプライベートでもっと楽しんでも、いいと思うゼ!ここユウの気に入った奴いねぇ?」
「ヨシ、俺は…」
ヨシの言葉に、ただ首を振る。
「まぁユウは忙しいしな。まんまり無理すんなよ働けなくなったら終わりだからな!」
「あぁヨシもな…」
「OK!じゃ俺はもう帰るからな、またな」
「あぁ、また…」
ユウはヨシの言葉に頷いて、シャワー室へ向かう。
一足先にシャワー室へ来たサクヤ。
「はぁ…助かった…、誰もいねーし」
とシャワー室を見回し息をつく。
取りあえず、ヨシから逃げることができて良かった。
思って簡易シャワー個室へ歩きだす。
二歩ほど進んだときそれは来た。
「痛ッ…」
(ウソだろ…ぃてぇ…)
サクヤの両足、ふくらはぎからふとももにかけてヒキつるように痛みだす。
ガクっと膝をついてツった足を抑え痛みを過ごすサクヤ。
「…ッ」
ほんの2~3メートル走っただけなのに…っ
足がツってマヒすることは初めてじゃない、生まれつきオレが持ってる病気。
一定以上筋肉に負担をかけると筋肉がマヒしてしまう。
握力も女よりない。
でも前はもっと走れたし力もあった最近になって身体の調子が、だんだん悪くなるのが分かる。
自分の病気の結末がどうなるのかも知ってるから……。
オレには時間がない…。
「っこんなトコで…」
うずくまってたら誰かにみつかってしまう。
でも、自分の意思ではどうにもならない両足…。
「くッ、…痛ぅ」
少しでも目立たない所へと部屋の端まで足を引きずりながら行く。
マヒは、数分でよくなるからそれを待つのみだ。
ひどい時は薬を使うけど…。
オレの病気のことはオレと身内、学校しか知らない。
ルードにも教えていない、BOUSの奴らなんかに知られたら弱みにつけこんで来る奴がいるし、特別扱いは嫌だ。
だから、ヨシの言う…
「誰とでもヤれる」
ってコトになるんだ。
オレの場合抵抗しても抵抗にならないから、結局はされるがまま諦める。
ヘタに力使ってマヒ起こしてもヤバイから。
でもヨシは別!
逃げれるなら何としても逃げる!暴力的で近づきたくない。
サクヤが足の痛みに一人耐えていた時、丁度ユウが何も知らず部屋へ入ってくる。
「ッ!(誰だ?)」
サクヤはドキッとしてその人物に目を向ける。
ユウか…びっくりした。
目線をずらし少し安心する。
なぜ安心したかと言うと、ユウは人とあまり話さないし、Hな噂もまったくない奴だから無視してくれると思ったのだ。
しかし…
「……どうしたんだ?」
あきらかに様子のおかしいサクヤが気になりつい声をかけてしまうユウ。
「えっ?ッ…」
話しかけられた事に驚く、でもそれどころではないサクヤ…
痛い。
「足どうかしたのか?…ヨシが何かした?」
「あ、ちがう、なんでも、ない…気に、しなくてもいいからッ行って!」
しかし、辛そうなサクヤを見捨てておけない。
サクヤの様子が気になり動けないでいるユウ。
「……あぁ。すまない」
「っ…なんで、あんたが、謝るんだよ…ッ」
話していると少し気がまぎれるので聞き返す。
「ヨシのお前への行動は、俺の責任でもあるから…」
「は?…どういう、意味なんだよ?」
「……」
話せないユウ。
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