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第29話
ルードに寄りかかり顔を埋め、ゆっくりとそれを抜いていく。
「ァ、っうー…」
息つくようにルードも声を出す。
まだ荒い呼吸を整えるように、その状態で時が過ぎていく……何も言えない。
テレビは、もうノイズ画面を映し出していた。
「おまえ……最高だぜ」
急にボソっと言うヨシ。
「なッ……」
反応の返しようのないルード。
青年は不敵に笑い。
「俺がヤったヤローの中じゃ、一番だぜッ」
「なッなにがっ」
なぜか腹が立って赤くなる。
「反応がっ!俺、ビンビン感じたぜ…」
にや~と笑いルードの顔を覗いてくる。
さらに顔を赤くさせる。
「う、うるせーっそんなコト言われてもハラ立つだけだっ!」
「なっ俺、上手いだろ。なぁ?」
「う゛っま、まぁ、ヘタじゃねーだろっ」
これが、精一杯と赤くなり顔を隠す。
「ふん?じゃサクヤと俺どっちが上手だった?」
「はぁ?」
唖然となる質問である。
「ヤったことあるんだろ、その様子なら…」
答えを促されて困惑する…
(そ、それは……)
今のプレイが思い出される。
(気持ち良かったのはこっちかナ…)
一瞬思うが、いやいやと抵抗。
(アキラの時は疲れてたりヤられた後だったり全快じゃなかったから!)
必死に否定して頭を横に振る。
ヨシはルードの様子を見て鼻で笑い…
「ふふん認めたくない?ま、アイツは受専門だからな、俺に勝つのは10年早い!」
自信満々に言うヨシが可笑しくて笑ってしまう。
「少しくらい俺たちの仕事のこと教えてやるよ」
横目でルードを見つつヨシは続けて説明する。
「俺たちは見りゃ解るように男とヤって、それを映像にして売ってるんだ。そうだな、今は一回20万ってトコだ」
「20万!?」
「そう、まぁ年齢や内容で変わってくるけどな」
「……」
ア然とするルード。
「最初はみんな無理やり入れられるんだ。親にバレてもいいのかって……」
淡々と話すヨシの言葉の内容にひかれる。
「そんな……」
「でもな、BOUSの奴らも見境いなしに入れたりしねぇ社会についていけない奴や寂しい思いをして心にスキのある奴を調べ選ぶんだ」
「……」
「そーするとな、そんな奴らは、例え演技でも愛されることに喜びを感じて、抜けれなくなるんだ……」
「……ヨシ?」
「俺もそうだった、ガキの頃、親父の連れ子だった俺は、さんざん義母さんやばーさんにイジメられた。追いつめられて自殺未遂までしたんだ」
そう言いいながらヨシは左手首のバンドを外して見せる。
そこには、何回も切りつけた古傷跡があらわになる。
「ッ…ヨシ」
痛々しくて目を、そむけたくなる。
(……同じだ…同じなんだ、この、切なさ…)
「その時、俺は青森に住んでて親父ここに単身赴任してた。手首切ってからこっちに移り住んだんだ。小五の時…」
「おれと同じ年に……」
「学校行ったんだけどな、方言とかでイジメにあって、んな時に今の仕事知ったんだ」
「あんた…かわいそうだな…」
「そう言うなよ、今じゃけっこう好きなんだぜ、この仕事。……お前のその傷見て急に昔の事思い出して…」
「……」
「その、ワキ腹、ホウキの柄かなにかでぶっ叩かれた痕……俺もよく作ってた。あの廃棄倉庫でそれ見た時、カッとなって、過去を見せつけられたようでメチャクチャにしたかった、見ていたくなかったんだ…」
「……ヨシ」
「ごめん、謝って済む事じゃないのは分かってる。でも俺どうしても……」
「もういいよ、ヨシ終わった事より、これからの事の方が大切だからな、誰だって思い出したくない事のひとつやふたつあるんだから、自分を追いつめなくていいよ」
「……くくっ」
「なんで笑うんだよ!真剣に言ってる傍で!」
肩を震わし笑うヨシに少し怒って言う。
ヨシは……
「小五の言う事とは違うなぁって思ってよ」
「なんでだよ、思った事言っただけじゃんか!」
「……俺も、もう少しオマエのように強かったら良かったんだけどな」
「強くなんかねぇよ…おれ」
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