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第30話
「ううん、強いさ……お前もこの傷、母親に?」
「あ?あぁ、そうだけど……」
「ひどいよな…べつに子どもだけが悪い訳じゃねぇのに、それでも母親だって思うと何もやり返せなくて、いつまでたってもトラウマになっちまう。悲しいよな……」
静かな声で語りかける。
「……」
無言になるルード。
「ごめん、こんな事いつもは他人に話さないのにな、お前なら話していいような気になっちまう……」
「話して楽になるんなら聞いてやるよ」
なぐさめるようにやさしく返す。
「なんか、お前のそばにいるだけで安らげるな。俺、本名、北上由里ってんだ。ヨシヤス、覚えてくれよ」
「あんまり、かわんねーんじゃねーの?」
ヨシとヨシヤス。
ボソッっとルードが言うと。
「いいや、大違いさ、由ってね死んだ本当の母親がつけてくれた名前だから」
意味を知ってるのと知らないのじゃ全然違う。
「あ、」
ルードは、はっとするが続けてヨシは説明する。
「本トは、女の子だと思って由里(ユリ)って名前用意してたらしくて、生まれたら男だろ、あて字でヨシヤスだって笑えるぜ、サンザンからかわれた名だけどよ、嫌いにはなれないんだ」
やわらかく笑い言う。
「ヨシって、けっこうやさしい奴だったんだ」
「あぁ?」
「だってよぉ、初対面最悪の奴だったし」
「まぁな…でもいつもあんな事やってるワケじゃねーから、それに、もうオマエには酷いことはしない」
耳もとでささやかれドキっとする。
「う゛……、それにオマエ、オマエって俺の名前知らねーのか?」
「ははははっ」
「おれは撰都・ルダーク。ルードでいいよ、なんだかなぁ名前も知らない奴とエッチなんかして……」
「ルードっ!!」
急に声を大きくして、名前をよぶ。
「な、なんだよ!ぅ!……んっ」
言葉を発したとたんルードは口をヨシの唇に覆われる。
かすかな抵抗もヨシのキスには勝てない。
熱く甘いキス。
「俺はルードを売ったりしねぇ!絶対に!どんなに金が要ったって!」
「ヨシ?」
そのまま抱きしめるヨシ……
「俺は、お前を俺のものに、したいんだ!」
言われて驚くルードだが…。
「……ごめん、ヨシ」
静かに謝る。
「あ、えっと、そーだよな、ルードにはサクヤがいるもんな」
渇いた笑いをして離れていく。
「いや、そーじゃなくて、おれ彼女がいるから」
「は……?」
目が点になる。
続けて…
「彼女って……じゃあ、サクヤは知ってて?」
「うん、一番じゃないし愛せないとも言ったんだけど、好きだからっておれもけっこう世話になってるからエッチはお返しみたいなものかな…」
「わかる気がするな、サクヤの気持ちも」
「えっ?」
「ルードってさ、居るだけでまわりを幸せに出来るもの持ってんだよ。だから傍においておきたいんだ」
「……」
ルードの瞳を見つめヨシは続ける。
「俺ンとこにも来て欲しいな……あ、いや、何もエッチしに来いとか言う意味じゃなくてだなぁ……」
ルードに見つめられ、あたふたと答える。
「ふふっ、でも目的の中にそれもあるんだろ?」
「うっ……!」
「ヨシって素直でおもしろいな」
「なっどこがっ」
ヨシは勢いでルードを少し抑える。
「っ、いたたっ」
後ろで結ばれている手が抑えられ声に出すルード。
「す、すまん」
「これ、もう取ってくれてもいいだろ。逃げねーからさ」
ルードの訴えに申し訳なさそうに外しながら。
「そ、そうだな……ごめん」
そう謝る……
「ふーっ、あッ!カタついちゃってるよ、アキラになんて言おうか……」
「やっぱりルードってサクヤと住んでんの?」
「そうだよ。家にはちょっと帰れなくなって……」
「ふーん、じゃぁ毎日やっちゃってるワケですか?」
「なっんなワケねーだろッ!アキラだって遠慮してんだから!!」
ルードはヨシの言葉に顔を赤くして言う。
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