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第38話
(あぁ、オレそれをアキラの前でもやっちまったんだ……)
倉庫でのヨシとの事を思い出すルード。
(こんなに悔しくてイヤな思いさせたんだ……ごめん)
ルードはアキラに寄り添ったまま、朝をむかえた。
朝の支度をしながらアキラの様子も見るルード。
朝7時頃になりアキラが瞳を開ける。
「…う…ん、」
最初はその瞳に映るものもかすんで見えたがすぐにピントが合う。
キレイになったベッドと自分……。
少しボウ然とする。
「あっアキラ!良かった、目覚めた?」
すかさず寄ってくるルード。
「これ、お前が、綺麗にしてくれたのか?」
目線で確認しながら聞く…。
「おう!あのままじゃ寝かせられなくてな!」
頭をかきながら答える。
「ごめん、迷惑かけた……」
ポソっと謝るアキラ。
「ばかっオレが好きでやってるんだから謝るなよ!」
アキラはルードの言葉を聞きながら起き上がる……。
「まだ、寝てた方が……」
気遣い声をかける。
アキラは起き上がった途端、なんとも言えない不快感におそわれる。
「…ッ」
(ぅッ、吐きそ…っ)
口を覆うように手をあて、急に壁にぶつかりながら部屋を出ていったアキラに驚くルード。
「ア、アキラ?」
廊下つきあたりの洗面所にかけ込む。
――ザーッ
「っゲホッ、ケホッ!…っハ、ハァ、コホッ…」
咳込んで吐き出された白いモノは水と一緒に流れていく。
……ドガッ!
「ッちくしょッ!」
鏡を右手で殴りつけるアキラ。
その反動で右手が痺れてくる…
悔しさ?情けなさ?ツラさ?
「……アキラ?大丈夫か?」
後を追ってきたルードが寄ってきて背をさする。
「情けねぇ、こんな姿お前に見せたくないのに……」
顔を下げて思いを伝える。
「バッ…あたりまえだろッ!ひどい事されたんだからっ」
ルードはまっすぐアキラを見て答える。
「……オレは、…慣れてるハズだったんだけどな……」
そう唇を噛んで、ルードを抱きしめるアキラ。
震える手……。
何かを訴えている……手。
「なれなんかあるか!ばかっ」
そう言ってキツく抱きしめ返してくれるルード。
その温かさに救われたような気になる。
部屋に戻り、アキラはベッドサイドに身体を預け座っている。
ルードは、その、隣に寄り添うように座り。
「なぁ、アキラ、あの二人って……」
少し、聞きにくそうにきりだす。
「あぁ、ルードも知ってるように、オレのバイト先の奴ら、デカイ方はタツって言って、監視役で暴行撮影ばっかりやってる嫌な奴」
アキラは淡々と、話してくれる。
「もう一人も悪い奴?」
ルードは、気になりが問う。
「……アイツは、ユウって言って、オレと同じでバイトしてる奴……」
少し考えるように黙って続けて言う。
「……アイツは、悪い奴じゃないよ……ひどい事できる性格じゃないと思う……」
BOUSでもユウが他人を暴行したなんて聞いた事ないし、演技でさえ相手に負担がかからないように気遣う奴だから。
「そうなんだ……」
アキラの説明を聞いてうなづくルード。
「でも……良かった、ルードが見つからなくて……」
「なッ何がいいんだよ!全然よくねぇッ」
やさしい目で言うアキラに、慌てて言いかえす。
「本当に良かった、あんな仕事は絶対にルードにはさせたくないから……オレみたいに汚れた人間にしたくない」
柔らかく笑い語りかける。
ルードは、首を振って否定する。
「アキラは汚れてなんかない!おれのために一生懸命になってくれるアキラがすごく綺麗にみえるッ…おれはアキラのやさしい心を、いつか砕いてしまいそうで恐いんだッ!」
ルードは、不安に思う事を精一杯伝えるが……
「大丈夫だよ…大丈夫」
ルードの髪をやさしく撫でながら繰り返す言葉。
(……わかってるこの時は永遠じゃない……いつかはルードを手放す時が来る……それは仕方ない事で……今、この瞬間が貴重なものだから、それでいい……)
「アキラ……」
アキラの様子に心が痛くなるルード。
「ッあーもぅ、頭痛が治んねぇ……オレもう少し寝てていいか?」
不意に頭をおさえて、力なく言う。
「ど、どーぞ!あたり前だろっ!あ、起きた後に何か用意しておこうか?」
やさしく聞いてくるルードに…
「んー、そうだな、おいしいコーヒーと風呂が沸いてたらいいな…」
微笑しながら頼むアキラ。
顔色は、まだ悪い……。
「オッケー!」
軽く答えてアキラの傍から離れようとした時アキラに引き止められる。
「ルード、オレが眠るまででいいから、一緒に寝てて欲しいんだけど……」
笑ってはいるが寂しそうな瞳。
「ニッ!いいゾっわがまま兄ちゃん……」
にっこり笑って、アキラと共に布団の中へもぐりこむ。
そして、ぎゅっと片手で抱きしめる。
やはり熱があるのか熱い身体のアキラ。
「わがまま兄ちゃんは、ないだろー」
アキラはそうルードに言葉を返すけど、その温かい手に感謝していた…。
それは、ずっと続いていた頭痛が、ルードの温かさによって薄れていくように感じたから……。
≪罰・撮影≫終
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