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第43話

「じゅうぶん理由になるだろ!」 アキラは幸せそうに笑って言う。 その顔を見てドキッとする。 「…あぁ、そうだな…」 その幸せそうな顔を見ると自分の想いなど押し殺せると、思ってしまう。 (諦めなくては…自分は、こうして近づけただけで満足だから…) 自分の気持ちに、矛盾を感じながらもそう思う事にするみずき。 それよりも、言わなくてはならない事を言葉にする。 「…サクヤ」 「えっ」 ネームで呼ばれて、反応するアキラ。 その綺麗な顔には、まだ、小さくあざが残っている。 みずきは続けて… 「この間の事…すまない、ひどい事をした…」 真剣に謝るみずきを見て、アキラは… 「あー…いいよ、あれはオレも悪かったんだし、ユウにはしなくていい撮影までさせてさ、こっちこそゴメン……」 しおらしく謝るアキラを見て… 「そんな事は…」 はっとするように言葉を出す。 「オレはもう気にしてないし、忘れようと思ってるし…」 それを遮るように言葉を足す。 「だから、気にすんなよ…」 「そうか…でも、次のお前の相手は俺だから…11/3は、必ず来てほしい……」 (もう二度とアキラにあんな事はしたくない…) 心で強く思う。 ……思い出して辛くなる。 「……ワカッテマスヨ…」 オレだって嫌だよ……と付け足して思う。 しばらくするとルードがやってきて二人を呼ぶ…… 「おーい!出来たぞ!こっち座って!」 笑顔で急かすように言っている。 「わかったよ、こっちこいよ…」 アキラはみずきを呼んで食卓へつく。 「おー、うまそう…」 出されたおかずに声を出すアキラ。 「ほら、みずきも座って!今日は、からあげとサラダ、みそ汁。ごはんだよ!時間なかったから、いいものじゃないけど食べてな!」 そう言うとルードも席につく。 そして……。 『いただきます』 アキラとルードが一緒に言って食べはじめる。 「あ!みずき、いただきます言わなきゃダメだぞっ」 みずきも箸を持つが、ルードに指摘される。 「あ。い、いただきます」 そう手を合わせ、みそ汁を飲んでみる。 「うまい…」 自然と言葉が出るみずき。 それは、本当においしいのだ。 いつも、コンビニで食事を済ますみずきには、懐かしい味だった。 ルードは嬉しそうに笑って答える。 「良かった!みずきの口に合って、おかわりあるからな!食べて」 「あぁ、すまない…」 ルードに礼を言ってアキラの方をみるみずき。 ルードの手作り料理をおいしそうに食べていた。 「…足りるのか?」 アキラを見てつい言ってしまう。 「え?」 急に聞かれみずきに顔を向けるアキラ。 「だろっ!みずきもそう思うよなっ!アキラって少食ーっ!」 ルードも口を挟む。 そのアキラの食事は驚くほど少ない。 小学生、いや、幼稚園生のごはんぐらいしか盛つけてないのだ。 「あたり前だろ、みんなよく食えるよな、そんなに、いっぱい…」 本当に分からないと言う感じで、首をかしげる。 「おれたちは、普通だって!アキラが食べないんで最初っから少なくしてるんだ、ごはん」 「その方が残らなくていいからな」 アキラも付け足して言葉にする。 にぎやかな食卓……。 アキラはルードと話している。 するとルードがみずきに話しかけてくる。 そしてアキラも…。 懐かしい気持ちになるみずき。 ずっと前…こうして三人で食べていた。 母さんと姉さんと自分で手づくりの料理を…。 今は、信じられない、アキラの家で、それを味わうとは夢にも思わなかったみずきだった…。

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