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第46話《秘めたる想い》
――翌朝7時。
一番に目が覚めてしまったみずき…。
すぐ横にベッドにいるのは金髪の少年ルード。
まだすやすやと眠っている。
(…アキラは?)
やはりみずきが気になるのは、片想いのそのひと……。
アキラは身体を丸めるように布団の中で眠っている。
ほどかれた淡い栗色の髪の毛が、色白の整った顔を隠している。
その隙間から見える表情……
長い睫毛を落とし、綺麗な瞳を隠す……。
はじめて見る…寝間着姿で無防備な、寝顔のアキラ…。
(……綺麗だな)
みずきは、アキラを起こさない程度近寄って…アキラの寝顔を見つめてしまう…
普段、目を合わすことすら逃げているみずき。
こんなに近くにいる自分がまだ…信じられない…
しかし、現実は甘くない…
アキラには好きな人がいて…
一緒に暮らしていて…
そう思うと…
胸が締め付けられるように痛む…
昨日、諦めると、自分に言い聞かせたばかりなのに…
アキラが幸せに思うことが…俺の幸せだと…
諦めないと…
無理やりにでも……
どう考えても自分はアキラに釣り合う人間ではないから…
人に嫌悪されるような事を隠している自分…
ただ逃げているだけの弱い自分では……
自信を持って、告白などできない……。
「…ん?みずき…おはよー、どうかした?」
アキラのことに集中していたみずきに、ふいに後ろから声をかけてくる金髪の少年。
「…!いや、おはよう…」
内心焦る心を隠して、声の主ルードに向き直るみずき。
「アキラならそのうち起きるから、寝させとけばいいよ。おれ、朝ごはん作るから!もちろん食べていくよな!」
眠っているアキラを気遣ってか、小声でみずきに話しかけるルード。
「あぁ…ありがとう」
「じゃ、待っててね!」
ルードは寝起きでも元気に笑いかけて1階へと降りていく…
「……」
ドアが閉まり…静かな部屋に二人きり……。
そう思うだけでドキドキしてしまう…
みずきは頭を振り、アキラから離れる。
こんな邪な気持ちを隠しているのは自分だけ…
アキラも…ルードさえも、強く自分に素直に生きているのに…
情けない…
こんな自分は…この場所に居ることすら間違いのようにさえ思えてくる。
しばらくすると…
アキラが布団の中で寝返りをするように動く。
「ん…、朝…?」
眠そうな声で呟くアキラ…
ゆっくりと起き上がる。
「……」
手で、さらさら長い淡い栗色の髪をかきあげてといている。
みずきは、その様子に見惚れて…おはようの挨拶をするのも忘れてしまう。
「…あ、そっか…。おはよ」
ぼーっとしているみずきの姿を見つけて、思い出したように呟いたあと…柔らかく挨拶してくる。
「あ、すまない…おはよう」
挨拶を忘れていたことと、さっき見惚れてしまっていたことに罪悪感が過ぎり…いきなり謝ってしまう。
「は?ま、いっか…昨日はよく寝れた?」
いきなり謝るみずきに首を傾げるアキラだが…布団から出て、カーテンを開けながら話しかける。
「あぁ、おかげで…」
深緑の…澄んだ綺麗な瞳…。
偽りの心を隠している自分は、今は…長くは合わせられない…
「それはよかった。ルードはもう起きてるよな…」
みずきを振り返りながら、軽く聞く。
「あぁ、朝食を作ると言っていた…」
姿を目で追っていたみずきだが、振り返ったアキラの瞳からは逃げてしまう。
「…料理はルードの趣味みたいだからな。楽しそうに作ってくれるんだ…変わった小学生だろ?」
ルードのことを話しているときは、なんとも言えない優しい笑顔を見せる。
「……」
本当に好きなんだな…、と表情には出せないが、辛く感じてしまい…
そんなルードを羨ましく思ってしまう。
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