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第55話

「うん、おもしろー、…そういえば最近、顔に傷ないな、親父さん来なくなったのか?」 急に父親の事を話だされて、アキラの前でも顔を暗めるみずき。 アキラは好奇心でなにげなく聞いたのだけれど、みずきの様子を見て…。 「話題変換しようか?」 そう聞いてみる。 みずきは軽く頭を横に振り…。 「いや、…最近は来てない。でも、近いうちに来る…」 静かにアキラに伝える。 「なんで?」 「給料日が過ぎたから、金を取りにくる…」 「…金?金って銀行に預けてないのか?」 「あぁ、前は預けていたんだが、印鑑ですべて引きおとされてしまうから…」 「マジー」 目線を合わせず、諦めたような口調で話す。 さらに思いつまった様子で続けて言う。 「……だから、今日は長居しないでくれ、せっかく来てくれたのに、悪いが…」 「どうして?」 「……会わせたくないんだ」 俯いたまま、そう答えるみずき。 会わせたくないと言われれば会ってみたくなるのがアキラ。 「…オレにも危害加えるような親父なのか?」 「……」 「なぁ、教えてくれよ。お前の悩んでる事、少しは役にたてるかもしれないぜ?」 何も答えられない。 アキラに本当の事を知られたら…今よりもっと軽蔑される。 父親と寝ているなどと…言えるわけがない。 みずきは頭を横に振る。 「みずき、オレはルードに比べたら信頼できねぇかもしれないけどなぁ…」 アキラは違う意味に受けとり首を傾げ言葉をだすが…。 みずきの注意はアキラからそれる。 外から聞こえた足音へ… 「ッ!!」 「な、なんだよ!?」 急に慌てるみずきをみて驚くアキラ… 顎然としながら、みずきはぽつり… 「と、父さんが来た…」 「えっ?」 聞く間もなく独特の足音は近づいて来て、みずきの戸を激しく叩きだす。 『おいっ!居るのは解ってるんだっ!!出てこいッ!』 まるで悪い借金の取立て屋のような怒鳴り声。 「あれ、親父?」 アキラの問いにも答える余裕がないみずき。 アキラが居るのに…! ほっておけば帰るような人間じゃない、ヘタすれば窓を割って入ってくるだろう。 「くっ…!」 みずきは苦痛な顔をして動きだす。 棚から現金10万円を取り出し、アキラの手の中へ握らせる。 「お、おい!?」 みずきの行動が理解できず、アキラは困惑する。 「俺は…お前に言葉で伝える事が出来ない、だから…見ていてくれ…」 追い詰められたみずき… 言い聞かすように瞳を見つめ伝えて、奥の部屋にあるクローゼットの中へアキラを隠す。 「…?みずき?」 「絶対に、何があっても絶対に出て来ないでくれ!」 そのあまりに真剣な瞳と声色にドキっとして、大人しく従う。 クローゼットは閉められ、隙間から部屋の様子が伺える。 みずきは意を決して戸へ向かう。 どうせ、いつかはアキラにも分かる事、だったら今でいい…。 入口の戸を壊しそうな勢いで叩いている父親。 スッと戸を開けるみずき。 その途端…。 「中に入れろッ」 部屋の中へ押し入ろうとする父親ナオキ。 「嫌だ!父さんにやる金はないっ!帰ってくれッ」 みずきはいつものように強く言うが、気が荒立っている父親はまったく聞く耳持たない… 「うるさいッ!どけっ!!」 無理ヤリみずきを突き飛ばし中へと入る。 バンと戸は閉められ… 「金は!!」 部屋中を掻き回す。 引き出しの中からそれを見つける。 「っやめろ!俺の金だっ!!」 取り返そうとするが、跳ね除けられる。 「何ィ!9万しかないだと!?何に使った!!」 不足分をみずきに問いつめる。 「俺の金だ!何に使おうが、俺の勝手だっ!」 そう反発する…… 「だまれ!!」 バキッとそのままみずきを蹴り倒す。 「痛ッ!」 そしてまた、金を探すため部屋の中を荒らしはじめるナオキ。 「やめろッ!本当にないんだッ!」 起き上がり、父親の行動を止めながら言うが、乱暴な父にまたも、蹴り飛ばされる。 「チッ!」 現金がないと思ったのか… 舌うちする父親。 「来いッ!」 「嫌だッ離せ!」 いつものように、みずきを奥の部屋に引きずり込むナオキ。 そのまま、床にみずきを叩きつける。 「ウッ…」

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