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第61話
「あっぃや!…放してっユウっ」
ユウはサクヤに乱暴に触れながら、その相手をまともに見ることができず、サクヤの息づかいと悲痛な声を耳の近くで聞く……。
こんなにも…欲しい人物が、もう手の届く場所にいる…。
けれど…これは演技で、ツライSEXには変わりない……。
下着の上から後ろへユウの細い指を触れさせる。
「ハイ!ストップっ、いいよ。ならしして…」
トオル監督が、いったん止めて言ってくる。
『ならし』とは、強姦の撮りなどのとき、受け手側に負担が大きいから、撮影前にゼリー状の表面麻酔薬を使って馴らしておくこと。
サクヤなどは普通の強姦の撮りの時でも、演技が下手だから使わせてもらえないのだが、今回は、それじゃキツイ為、使わせてもらえるのだ。
「……」
「…お願い」
自分でならすわけにもいかないので、相手役に頼むのが普通。
サクヤは感情のない言い方でユウに頼む。
「あぁ……」
ユウは、答えて、薬を右手人指し指につけ…
「…いいか?」
もう片方の手でサクヤの肩に触れ、やさしく問う。
「早くして…」
またもそっけなく言うサクヤ。
それを聞いて、静かにサクヤの下着をずらし、直接指を挿入していくユウ。
「…んっ」
サクヤは小さい声を漏らすが、やさしくされているので痛いわけではない。
ユウは薬が中へいきわたるように指を詰める。
そして、そこから指を抜き、新しく薬をつけ、今度は下着の上から抑えるように指を挿入していく。
「…っ痛ッ」
薬をつけていようとも、布ごしでは多少痛みが伝わる。
あまり声を漏らさないように、我慢してユウの肩に掴まりながらそれを過ごすサクヤ。
ゆっくりと奥へ、馴らしていくユウ。
少しでも楽な撮りにしてやりたい一心で……。
「ハイ、そんなもんでいいよ、すぐ撮りに入るから、準備して!」
トオル監督が、不意に声をかける。
すっと静かにサクヤから指を抜くユウ…。
「…っ」
それだけでも、息遣いが早くなるサクヤ……。
すぐ撮影の状態に戻る二人。
「はい!それじゃ本番、シーン2、030、スタート!」
トオル監督の声とともに開始される行動。
ユウは、サクヤの上半身をキツく抑えながら、ならしのユウとはうって変わって、強引に指を二本ほど下着の上から入れ、奥まで押し込む。
「ぅあッ…痛っぅ、ィッ嫌ッぁ…」
強引な動きに痛みがはしり、布ごしと言うだけで痛みは倍になる。
身体を這うユウの舌の快感より痛みの方が勝る…。
でも、馴らしなしよりは痛さも違うので、我慢するしかない。
「……嫌っ、やめ、てッ、ユゥ、ィッ…お願い、だからッ……」
どんなに苦でもカメラは意識する……
でないと、NGになってしまうから……。
ユウは、サクヤの身体を反しこちら側へ向かせる。
そして、入っている指を抜きさり、それと同時にユウのモノを押しあててる。
ユウの動きに、つい、身体がビクッと反応してしまう。
指でもあれだけ痛いのだ…これは……。
ユウはサクヤの、その反応に、一瞬躊躇してしまった…。
しかし――。
台本通り…ググッと押し広げるようにサクヤの中へ挿入する。
「ぅァッ!ィ…痛ィッ…っ」
声にも出るが、心ではもっと叫ぶサクヤ。
「ぃ!ィャ痛ッ」
さらに押し込もうとするが…。
「ダメダメ!カットッ!」
急に入る監督の声。
「痛ッ…ハァ、はぁっ、はぁ…」
スッと抜かれて、大きく息をするサクヤ。
ユウは振り返り監督を見る。
「今のはユウちゃんがダメ!キミは襲ってるんだよ!もっと強引に入れなきゃ、遅いよ!」
キツくユウを叱るトオル監督。
「…すみません」
ユウも呼吸を上げてきているが…
すぐさま謝る。
「042からいい?」
監督の言葉に……
「はい…」
頷くユウ。
サクヤの方へ振り返り…
「すまない…」
小さく謝る。
サクヤは、頭だけ振って、生つばを飲み込む…。
「準備いい?じゃ、042スタート!」
そして始まりのかけ声。
そのまま、サクヤへとユウのものを押しつけていく。
時間がたったので、指で広げていたトコロも少し戻っていて、入りにくいが、それでも同じNGを出すわけにはいかない…。
ユウは、躊躇いなくサクヤへと強引に挿入する。
「あぁッぅ痛…ッ、ィタ…ぃ!」
思わず、泳いだ左手がユウの服を掴んでしまう…
容赦なく奥へ押しやられて苦しい……。
ほろっとサクヤの左目から涙が零れ落ちる…。
「ゃ痛ッ…ぁァっぅんッ、ぁッ」
……目線を、合わせなければ…。
サクヤは、貫かれながらも、左手でユウの服を掴んだまま、なんとか顔を上げる…。
唇を噛んで耐えるサクヤの顔……。
二人の瞳が重なる…。
そして、サクヤの目線はカメラへと流れる…。
ユウは、その瞳を見てしまい、背すじを氷が通っていく感覚がはしる…。
「ごめん…」
言ってしまってハッとなるユウ。
……NGか!?
いや、声が小さすぎて先輩たちには届いていない…危うく、サクヤの演技を台無しにするところだった……。
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