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第62話

……気付けば、ユウの左目から、涙が零れていた。 それをサクヤの身体で拭いた… 綺麗な身体を舌でなぞりながら気付かれないように……。 「っん、ッィぁ、ユ、ゥッ…」 激しく突き上げられ、サクヤは……。 「ぁ痛、んッぅ、ィタッぃ…もォっ」 もう耐えられなくなり、握っていた左手の力が抜けそうになる。 その前にユウのものが素早く抜ける。 「あぁッ…ぅ」 その動きで意識を保つサクヤ。 そして、まだ布がサクヤの中に残っている、その下着もズリ降ろす。 「っ痛…」 痛みに呻くサクヤを、快感をもたらす舌で舐め、何もないサクヤの中に、早くやさしく挿入するユウ…。 さっきがあれだけ痛かったので、ほとんど痛みはない。 「ぁ…んッ」 快感が生まれる。 激しい呼吸の間に漏れる声。 もう悲痛な叫びではない。 はげしく揺らされ…息も出来ないほど…。 「ぃん…っ、ぁッ」 その動きも、ようやく終わりスッと素早くユウはサクヤから抜きさる。 「んっッ…」 そしてユウは無言で見下ろし、サクヤのセリフで締めくくられる。 「ハイ、OK!お疲れさまー。良かったよ」 『ありがとうございます』 二人の声がかさなる。 「大丈夫?はい」 ルキがそっとタオルとバスローブを手渡してくれる。 「すみません」 まだすぐに動けないアキラ、とりあえず膝の上へかけておく。 「じゃ、編集があるから行くね」 そう言ってセンパイたちは出ていってしまった。 「はー、疲れたぁ、ねむ…」 「大丈夫…か?」 「加害者が何を言う…」 キッとにらんで続けて言うアキラ。 「謝るのは、終わってからにしてくれよな…」 「!!」 「襲ってる場面なのにオマエ急に謝るんだもん、オレNGなるかと思ってヒヤっとしたじゃないか……」 息をつきながら伝える。 「……オレも」 ぽつりと呟くみずき… 「ふぅ、しっかりしてくれよ、センパイさん…」 そう言って、頭をかがめる。 「サクヤ?」 「おやすみ」 そうポツリと呟く… 眠るらしい……。 そんなに時間をかけずにアキラの寝息は聞こえてきた……。 無防備に眠るアキラを、その姿をしばらく見つめていた…。 いつまでも眺めていたい気分で……。 みずきは、アキラの長い茶色の髪を、そっと指ですくってみる。 さらさらと、すぐに落ちてしまう…。 「……」 触れると…離れてしまう…。 さっきの左目から不意に涙が零れる。 無意識に……。 そして…言葉がこぼれてしまう…。 「アキラ…助けてくれ、俺を…」 声にならないカスれた声で願うみずき。 「たすけ…」 (助けてほしい…でも、ダメだ…) 頭を強く振り、みずきはつい口にしてしまった、本心を否定する。 ぐいっと流れていた涙を拭いて、立ちあがり振り返ることなく出ていく。 ……そして、3Fにあるシャワー室へと逃げるように降りる。 (あきらめろ!…もう、諦めるんだ…) 強く自分の心に言いきかす。 (諦めてしまう事が楽だったハズなのに…なぜ?…なぜなんだ…) この想いを頭から消すために、個別分けされているシャワー室の壁を力いっぱい殴るみずき。 そして、すぐに湯を全身に浴びる。 「おーい、ココの壁なんか殴ったら手ェいかれるぞ…誰だ?」 不意に隣のシャワー室から声がする。 シャワー室と言っても高い板でサイドを仕切っただけの簡易なもの。 声の主はすぐに、ギシッと板に掴まって、見下ろしてくる。 長身の人物はヨシだ。 さっぱりした顔でもう服を着ている。 「なーんだ、ユウか。何?サクヤとの撮影うまくいかなかったのか…?」 「ヨシ…」 見上げ、確認してふっと見るのをやめるみずき。 「そんなワケないか、ユウはプロだし、サクヤも受に関しちゃプロだもんなぁ…」 「……」 何も答えないみずき… 「なんだよ、ユウ。今日はやけに無口じゃねーか」 「べつに…」 「やっぱ気にいらねーコトあるんだろ!サクヤに。壁なんかにあたらずに直接言えばいいじゃんか?」 少し溜息をついて答えるみずき。 「…言えれば苦労しない」 伝えられない想い… 俯いて、静かに言うみずきを見てヨシは…。 「だろーな、お前の性格じゃ、なら俺がシメてきてやるよ、あいつ見てるとハラ立つんだよな!」 みずきの言葉をそう受け取り、向こう側に消える。 ユウは、ハッとして… 「ヨシ!」 強い口調で呼ぶ。 「4Fスタジオにいるんだろ?奴」 個室から出て言うヨシ。

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