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第63話
「やめろ!ヨシッ…ア、サクヤは、撮りが終わったばかりだ、まだ眠っている…!」
「ンなん起こせばいいだろ?」
軽く言うヨシに、みずきは慌てる…。
「ヨシ…!」
言いながらシャワー室の戸を開けるみずき。
「どーせ俺、来週ヤツと撮りなんだぜ、アイサツだよ!」
シャワールームを駆け足で出ていくヨシの後ろ姿を見て…ザワッと心が動くのを感じるみずき。
シャワーを止め、意識は早く4Fスタジオへ行く事に占められていた。
4Fスタジオでは、あいかわらずスースー眠り続けているアキラ。
誰もいない広いスタジオの端で眠っている。
ガチャっと扉が開く…。
「おーおー、やっぱいるいる…」
静かに入口を閉める、ついでにカギもかけるヨシ。
「ったく、なんでオマエみたいな、何の不自由もない医者の息子、超金持ちのおぼっちゃんがココにいるんだか!」
遠くから、そう言いながら近づいていく。
「ここは金のある奴に出す金なんかねぇんだよ!ノコノコ帰ってきやがって!!」
大声を出すヨシだが、アキラは眠り続けている。
「コラッ起きろッ!」
そう言い、髪を持ち引き上げるヨシ。
「ぅ…ッな…?」
ようやくうっすら目を開ける。
「フン!目ェあけろよ、サクヤ!」
「ッヨシ!!」
驚いて立ちあがり逃げようとするが…足がもつれ、すぐ倒れてしまう。
倒れたアキラに近づき。
「へー、色っぽい格好してんじゃん」
「な、なんでここにいるっヨシ!」
上体を起こしながら言うアキラ。
「あー?テメーを追い出すために決まってるだろ!なんで戻って来た?逃げ出すなら逃げきってみろよ根性なしが!だから、おぼっちゃんは嫌いなんだッ!」
アキラの首を片手で抑える。
「るせぇ!てめーには関係ねぇだろーがッ!」
キッとヨシを睨み言い返す。
「ハン!威勢だけはいいなぁ、それともコッチの方もOKかぁ?」
そう言うのと同時にヨシは左手で首を絞め、右手の指を2本ほどムリヤリ入れてくる。
「っ!痛ッ…ぃ、やめろッ!」
あまりに急なヨシの動きに肩をこわばらせ、痛みに呻く。
力無い手でそれ以上、行動を許さないようにするが…
「あッ痛っ…クぅ、っ」
ヨシは入っている指先をムリに動かす、さらなる痛みで息を詰まらせるアキラ…
「テメェはいなくなりゃイイんだよッ!」
そう叫び、アキラの手を振りきり強引に指を3本に増やし根まで入れこむ。
「イッ!痛ぅ」
あまりの痛さと撮影の疲れとで、意識を失ってしまう。
急いで服を着てスタジオに来たみずきだが…
「……!カギが、アキラ!」
部屋はロックがかかっていて入れない。
慌てて呼ぶが、防音システムのあるヘヤ、音は届かない……。
「!!」
フッと思い出すみずき。
隣の部屋からベランダを通って行ける!思うと同時に身体も動く。
スタジオ内では……
「オラ!起きろッこっちは、あン時テメーの弟に蹴られたキズがちゃーんと残ってんだ!倍に返してやるぜッ」
壁に抑えつけ首を抑えながら、抜いた指をコブシに変えて、手加減なしに、みぞおちに一発!
ドスッと鈍い音。
「ぅくッハ、かはっケホッ!ッ」
苦し気に咳をするアキラ……。
「ッ…はぁ、あ、あれはテメーが悪いんだ、テメーがルードをッ……クッ」
続けて言うアキラ、それ以上しゃべらさないように首を強く抑えるヨシ。
「なに言ってんだ、てめーが全部悪いんだろーが!」
「くっ苦し…ッ」
長さを越して首を絞められ……。
「チッ!」
苦しむアキラを見やり、手を放す。
「けほっコホッ…はぁ、はッ…」
呼吸が楽になり、必死で空気を取り入れるアキラ……。
今度はアキラの髪を引き、顔を上げさせる。
同時に口づけて、ムリヤリ口を開かせ、熱い舌をすべり込ませる。
「…ンっ!」
身体が痺れてくる感覚。
舌の使い手ヨシは、キスだけでアキラの動きをカンタンに止めてしまう。
しかし、それでも手でヨシを押し退けようと必死になるアキラ。
下を触られ、嫌な気分になる……。
「んッぃャ…だっ!くそッ…っ」
抵抗しても、さっきのダメージが残り、力が入らない…。
「くっ!」
ヤるならヤれよ…と瞳をきつく閉じて、そっぽ向く。
「オラ!こっち向けよッ!サクヤッ」
壁に押しつけたまま、前にむかせようとするが、ガンとして動かない。
「俺は、てめーに言いたい事が山ほどあるんだ!」
「オレの知ったことじゃねぇ!」
横へ向いたまま言う。
「このッ!」
その態度が腹立たしくて、もう一度みぞおちへ膝蹴りを入れる。
「くっゥ…」
その時、バン!と、窓が勢いよく開かれる。
同時に聞こえてくる声にびっくりして見るヨシ。
「やめろ!ヨシッ」
その姿を確認してヨシは……
「……なんだよ、ユウだって、こいつの事気にいらないんだろ!邪魔するな!」
「っ…ユウ?」
アキラも先に帰ったはずのみずきの登場に、困惑して…蹴られた腹を抑えながら呟く。
「気にいらないんじゃない!」
ヨシに向かって強く言うみずき。
「な、何言ってんだよ…」
本気で怒っているようなみずきに、少し怯むヨシ。
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