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第65話《束縛と願い》
BOUS内、3F。
それぞれの個室で1時間があっという間に経つ。
一番に目を覚ましたのは、ヨシこと北上ヨシヤスだ。
頭をぽりぽり掻きながらぼーっと考えていた。
(やっぱ…ユウにあやまろう…)
いつもユウに怒られては、謝って元通り、パターン化しつつある…。
次に目を覚ましたのはサクヤこと楠木アキラである。
起きてみて冷静に今日の出来事を思い返してみる。
(びっくりしたよな…一日に2人もの涙にご対面だもん。ヨシの方はなんとなくわかるケド、ユウはなんで…?)
オレはあの時……
『いつもスカして大人きどって…』
オレけっこうキツい事あいつに言ったんだ……。
しかも今日結果的には2回も助けてもらってるのに…オレってひでー奴だよな…。
思い出すと少し罪悪感が生まれる。
……ユウこと鈴鹿みずきが起き出したのはそれらのすぐ後だ…。
(う…、1時間も寝たのに身体がだるい…)
熱でも出たのかと思うみずき…。
スッと起き上がると、さらに不快感が増す…。
(……水…)
異様に喉が渇いた感じがして、食堂で飲み物をもらおうと個室を出る。
バタン。
その音を聞いてヨシが部屋から覗く。
防音設計なのになぜ聞こえたかと言うと、ヨシはドアを少し開いていたからだ…。
みずきを確認して、声をかけるため…後をついて行こうとする。
そのままみずきはまったく気付かず廊下を歩いていく。
ゆっくり歩いていたみずき…だが…
その時、今まで味わった事のない感覚をうける……
ドクンっと…身体全体がヒキつるような…
心臓の音が響いてくるような衝撃がみずきに…
そのままヨロッ…と壁に寄りかかる。
「ユウ?」
心配するヨシの声もみずきには届いていない…
身体の底から炎のように、こみ上げてくる…
抑えようとしても、抑えられない……
次の瞬間、それは起こった……
「ウッ…カ、はっ…」
赤い、暗褐色の血液が、右手で口を抑えるみずきの手の間から流れ落ちる……。
よろめいて…壁に手を突きとっさに身体を支えるみずき…
「ッ!?」
ヨシは、かなりの衝撃をうけて動けなくなる。
そのまま寄りかかるように…
かろうじて左半身で身体を支えていたみずきだが、第二の吐血がおこり、服を赤く染めて、壁に手形を残し崩れおちる……。
血を吐いた時点で意識はモーローとしていて…
そして意識を無くす。
「……あ、」
一部始終を見てしまったヨシは、手が震え…一歩下がってしまう。
「ッだ、だれかッ!ユウがッ…!」
大声で叫ぶヨシ。
個室の人がいるかいないか解らない部屋までベルで呼ぶヨシ。
それに答えて出てきたアキラ。
「たすけ…血がッユウがっ!!」
ヨシは相当慌ていて、なんの事かわからないが、この真剣さは尋常じゃない…。
「な、一体、どうし…」
言いかけて止まるアキラ。
ヨシの後ろに見えた光景…赤い手形、そして…。
「ユウッ!!」
そこには、まぎれもなくみずきが倒れている。
ヨシを押しのけて駆け寄る。
倒れているみずきに近づいて状況をみる。
「脈…あり、呼吸もしてるな…」
意識のないみずきの体位を変え、すぐ応急処置するアキラ。
様子を、吐いた血の量や色を見る。
「どうした?」
あとから撮影関係者が集まってくる。
「な…ユウちゃん!?」
「ユウ!?」
血のついた床、壁、みずきの服を見て皆がガク然とする。
「し、死んでるの?」
一人の後輩が呟く…。
ヨシはビクっとする…。
「生きてる!早く救急車!」
アキラはそう怒鳴る。
「わ、わかった」
慌てて電話をかけに行くセンパイだが…
「駄目だがね!ここには救急車は呼べない!」
後ろから声がして皆が振り返る。
社長だ…。
「でも!ユウがこんなになってるのにッ!!」
震えた声で言うヨシ。
「そうです!早く処置しないと…」
アキラも言う。
しかし、社長はガンとして首を縦に振らない…。
そうしている間にもみずきの状態は悪くなるように思えヨシは、半泣き状態で叫ぶ。
「どうするんだよ!じゃぁッ!」
「ヨシっ車出せ、病院に連れて行く…」
アキラは、冷静に一番早い方法を選ぶ。
「あ、あぁ!」
言われた通りに車をとりに走っていく。
「センパイ、すみません。下まで運ぶの手伝ってください」
みずきにタオルをかけ血のついた服を隠し言う。
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