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第69話
「あぁ…」
「アキラってさ、けっこうワガママで、ガンコ者だけど…努力しててやさしいんだぜ。ケガ人とか病人見ると絶対ほっとかないんだ…今どき珍しいってオレもアキラを見習ってるんだけど。だから、ヨシもアキラと仲よくして欲しいな…」
「…ムリだよ、いくらルードの頼みでも…俺は奴に嫌われてるんだ」
首を横に振るヨシ。
「…アキラはさ、いつも『オレは人間嫌い』って言うけど、そうは思わないんだ、だって人間嫌いな奴が人助けできるとは思えないし…」
ぽつりぽつりと話はじめるルード。
「……」
それを無言で聞いている。
「結局、アキラは人間が大好きなんだよ…だから裏ぎられて嫌われるのが恐いんだと思う。嫌われる前に自分からキライになる…。なんか悲しいよな、でもアキラは悪いヤツじゃない、それだけは分かって欲しいんだ」
「あぁ…」
ヨシは頷きながらルードに圧倒される。
この洞察力…考え方…小学生とは思えない。だから皆ひかれるんだろう、この心に…。
そうこうしているうちに病院に到着する。
「着いた?早く!」
イソイソと車を降りるルード。
「待てよ!ルードっ」
ヨシも追いかける。
病院に入ると健次が気付いて…
「あ、ルダーク君、今晩は」
「こんばんはっ!けんじさんっ」
軽く会釈して通り過ぎるルード。
とにかく病室へ急ぐ…
病室に入るとアキラが…
「あ、ルード…」
「アキラ、みずきは?」
「まだ?」
ルードに続きヨシも聞く。
「あぁ、まだ覚めてない…」
そう伝え、アキラはみずきのそばを離れる。
代わってルードがそばに歩いていく。
少し真剣な顔だ。
「…みずき…」
ベッドにはりつけになっている人物の名を呼んでみるルード。
当然、返答はない…
「おーい、みずきーっ」
もう一度呼びかける。
「ルード、そんなに呼ばなくても、そのうち目ェ覚ますだろ…」
アキラがポツリと言う。
「う…ん、そうか、でもなんか言いたくなるんだよ」
「ま、迷惑にならない程度だったらいいけど、消灯過ぎてるし…」
ルードの言葉にやさしく答えるアキラ。
「うん」
そう、頷いて、みずきの手を握り小さい椅子に座り語りかけている。
ヨシもルードの反対側に座る。
それを後ろで見守るアキラ…。
少しして……
「…ぅ」
小さく声を出し、みずきが瞳を開ける。
「みずき!良かった、目覚めたよアキラ!」
ルードが一番に声を出す。
続いてヨシ…
「みずきっしっかりしろ!」
「…ルード?…ヨシ」
声に反応して呼ぶみずき。
アキラは、ほっとしたように頷き静かに、その場を離れる。
意識が戻った事を知らせに行くために…。
「よかった!心配したんだよ!」
ルードの声で意識もはっきりする。
そのルードに握られた温かい手で、ふっと思い出す…
あの時、自分の手を強く握ってくれた、その手を、その人物を…。
「…アキラは?」
名前を聞いてようやく、その人物がいないのに気付く二人。
「あれ?どこ行ったんだ?アキラ…」
ぽつりと言うルード。
「わかった!先生呼びに行ったんじゃねぇか?気ィついたから…」
「そっか…あのな、みずき、アキラ、一生懸命みずきのこと助けようとしてたんだよ!」
「……」
ルードの言葉にズキっと胸が痛むみずき。
アキラを叩いてしまった俺なのに…。
「それで!さっきまでずっとみずきのそばにいたんだから!」
ルードは元気よく話かけている。
「ここ、あいつのおじさんの病院なんだって…お前の治療費、アイツが払うってたぞ…」
「なっそれは!」
ヨシの言葉に起き上がろうとするみずき。
「みずき!だめだよ、急に起きたら!」
ルードが心配して怒る。
確かに、急に起き上がると反動がくるみずき…。
「おまえに借りがあるんだと…」
ヨシがぽつりと言う。
「借り…?」
みずきは首をかしげていると…。
「おやおや、元気な方ですね、まだ寝ていていいんですよ?」
小柄で黒髪の白衣を着た人物がみずきに話かける。
「あ、先生」
ヨシが姿を目にとめていう。
先生…アキラの叔父さん?
一瞬考えたが、みずきの視線は先生の後ろにいる人影に移る。
茶色い髪をおろしたままの…その人物は瞳が合うと、ふっと優しい目をしたが…すぐに目線をそらしてしまう。
「ごめんなさいね、血圧測ります」
そう言って健次はみずきの様子をみる。
みずきも視線を戻す。
「すみません、俺はいつ帰れるんでしょうか…明日仕事があるので…」
聞いてしまうみずき。
「うーん…ちょっと明日には帰れないですよ。鈴鹿さんの場合、最低6日間は入院が必要です」
「…それは、困ります。一週間も休んだら、クビになってしまう…俺は平気ですから帰してください」
みずきは頼むように言う。
「みずき!」
みずきのムチャな言い分を聞きヨシは、思わず名前を呼ぶ。
ルードも…
「わがまま言うなよー!」
と溜息。
アキラは、やっぱりな…と言う顔。
健次は…
「鈴鹿さん、みなさんが、どれだけ貴方のことを心配されたと思いますか、助かって欲しいと、その思いを無駄にしてしまうのですか…」
「……でも、」
先生の言葉を聞いても、頭を軽く振るみずき。
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