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第74話
……翌日。
アキラはみずきの父親を呼び出して、共に病院へ向かう。
父親の顔はどことなく険しい。
ほとんど、会話することなく病院へ到着する。
「ここの病院だよ、部屋まで案内するけど…落ち着いてみずきと話してくれよ?」
「あぁ、落ち着いている」
「なら、いいけど…」
病室の前まで案内していくアキラ。
「ここが…」
アキラがドアを空けようとした時、アキラを押しのけ父親が病室へ入ってしまう。
「あ!おいッ」
いきなり忠告をムシする直樹に引き止めるように声をかけるアキラだが…。
直樹はお構いなしに病室の中へ…。
「ッ!父…さん」
急に現れた人物に一瞬驚いて動きを止めるみずき…。
直樹はみずきの姿を捉らえて、迷いなく駆け寄る。
みずきは殴られるのかと身体を強張らせるが…直樹は、みずきの身体をしっかり抱きしめる…。
「…父さん?」
「心配した…ユウカ」
その口から出た名前は、自分のものではなかった。
「……、父さん…俺は、みずきだ…」
ユウカではない…
心を落ち着けてみずきは父親の肩を押して自分から放しながら、瞳を合わせて伝える。
「……俺は、みずきだから…」
もう一度、伝える。
「ッ…そう、だ、違う。ユウカじゃない…みずきだ、みずき…」
「……父さん」
「俺は…お前の父親だ。分かっているんだ…本当は…」
「……」
「……長い間、お前を苦しませて、すまない…みずき」
頭を下げ、謝る直樹。
「……父さん」
「でも…お前が、ユウカに見えて…どうかしてるんだ、俺はッ身体が抑えられない…」
みずきの顔に触ながらツラそうに、そう伝えてくる。
みずきは拒否せず、ゆっくりさとす…
「……、父さん。病院行こう…治そう。不自由な生活になると思うけど…でも、今のままじゃ、俺は嫌だ…」
「…みずき」
その真剣な瞳を受けて…直樹の心に響くものが…。
みずきは鈴鹿直樹の息子としての言葉を出す。
「オレは、知ってる…父さんが優しい事、バカがつくほど人がイイ事、俺たちを愛してくれていた事…知っているから、父さんなら元通りになれる。絶対諦めないで、治していこう。俺も力になるから…父さん」
本心の訴え……。
「……みずき、わかった…ありがとう」
直樹はそれに頷いて礼を言う。
「……うん」
その答えを聞いて笑顔になるみずき。
直樹もそれを見て…
「お前の笑った顔、長い間…、見ていなかった…」
みずきの髪を抄きながら直樹も微笑む…。
「俺も…父さんが笑うとこ、見るの久しぶりだな…」
「本当にすまなかった…みずき」
「まだ、これからだよ…」
本当に父さんがつらいと感じるのは、入院してからなんだから…負けるなよと。
「…あぁ、そうだな」
強い決意を抱いて依存症との戦いをするべく直樹はみずきに誓う。
アキラもその様子を見守り、安堵するようにみずきに頷く。
その後、アキラの紹介してくれた病院に入院した直樹。
みずきは直樹の残した借金と、入院治療費を払うため、真面目に仕事をする。
みずきとアキラは、少し距離は縮まったかにみえるが…
あいかわらず、他人以上友人未満のような関係で日々が過ぎていくのだったーーー。
《束縛からの解放》終
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