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第2話

1つ目の事件は高校1年生の夏のこと。拓海はようやく人に慣れ、初めての彼女もできた。だが、それも長くは続かなかった。好き、愛してる、そんな言葉を信じられない彼の心はどんどん彼女から離れていき、それを察した彼女が自分の方から別れを告げたのだ。 ーーそれが、彼にとってどんな意味を持つのかも知らずに。 その次の日は朝から嫌な予感がしていた。 「おはよう、千秋ちゃん」 そう言った拓海の声がどこか暗ったから。 「どうした……?」 思わずそう聞けば、拓海は笑って何でもないよ、と答えた。昔はすぐ僕に頼ってくれたのに、と妙な寂しさが心に広がる。 「ねぇ、今日一緒に帰ってくれる?」 どこか不安そうに、彼は僕に聞いてきた。いつも一緒に帰ってるのに、何でそんなことをわざわざ確認するのだろう。いつもと違う拓海の行動に首を傾げながらも質問を返す。 「何か遅くなる用事でもあるのか?」 そう言えば彼は少しぎこちなく笑ってみせて、首を横に振った。 「だったらいつものことじゃないか」 そうだね、と安心したように笑って、拓海は自分の席へと戻っていった。彼の行動に違和感は感じたものの、それからの拓海の様子は特に普段と変わらなかったからそこまで心配はしなかった。だが。 放課後、掃除から戻ってきても拓海は教室にいなかった。用事は無いと言っていたから、てっきり教室で待っているものだと思ったのに。 5分、10分、15分……。待っても待っても拓海は来ない。鞄は置いたままだから、先に帰ったということはないはずなのに。 もしかしたら何か面倒な事に巻き込まれているのかもしれない。だったら探しに行かなければ。 「うーん、今日は見てないけど」 「知らないなぁ、ごめん」 そう思って十数人に聞いてまわったのに、拓海を見かけたという人はいない。本当に何か大変な事に巻き込まれているのではないか……。そう思ったとき、ようやく有力な情報を得た。 「拓海?あぁ、アイツなら屋上に行くのを見たけど」 「屋上だな!ありがとう!!」 お礼を言って、急いで廊下を駆ける。よくよく考えれば告白とかいう可能性の方が高かったのだが、僕の頭の中はマイナスの想像でいっぱいだった。それが最終的には良い結果をもたらしたのだけれど。 屋上の扉を思い切り開ける。視線の先に見つけたのは、探していた人の姿だった。彼は手すりにもたれながら景色を見下ろしている。 その姿が、何故かとても哀しそうに見えた。

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