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○第14話○

だから言い訳でもなんでもなく、どうしてこの状況に陥ったのかは僕にも疑問だった。 声は巧みに僕を導き、あっという間に千秋ちゃんには僕のモノだという証が付いていて。 『嫌なら外せば?』 そんなことできないとわかっていて、声は楽しそうに聞いてくる。 『大丈夫だよ。だってお前は、あの時から千秋のモノなんだから』 あの時。声が指しているのはきっと、僕が初めて千秋ちゃんにキスをした日。 『あの時、死のうとしたお前を千秋は生かした。お前は確かに死ぬことを望んでたのに、だ。千秋は、お前の人生を狂わせたんだよ。だったら、責任をとってもらうべきだろう?』 声はいつだって、僕が心の奥底で望んでいることに理由をつける。 それが正しいことだと信じ込ませる。 『突然できた彼女なんかより、お前の方がよっぽど相応しいよ』 僕は千秋ちゃんのモノなのだから、千秋ちゃんも僕のモノであるべき。そう声は言う。 なんて暴論なんだろうか。 『でもお前は、千秋がいないと生きていけない』 最後にそんな確信めいた予言を残して、それきり声は眠ったようだった。 「はぁ………」 心に残った声を消すように溜め息を1つ。目の前の背中に触れるのは躊躇われて、服だけを軽く握った。 ベッドに入った頃に見えていた月の光は既に消えて、部屋には明かり1つない。 「千秋ちゃん、あいしてる」 小声でそう呟いた。あの時は「僕もだよ」って返してくれたのに、今は何も言ってくれない。 わかってる。千秋ちゃんが僕と同じ気持ちじゃないことくらい。自分の都合のいいように解釈して喜ぶほど、僕は幼くない。 でもきっと、もう僕が千秋ちゃんが居ないと生きていけない域まできているのは本当なんだろう。 今千秋ちゃんが反対を向いていることさえ寂しく感じるのだから。 愛されたい。この想いを許されたい。 どこまでなら許してくれる? 僕は今、千秋ちゃんの中のどこにいるの。 躊躇っていた手を伸ばす。起こさないようにそっと、彼を後ろから抱きしめた。 冷えていた指先が、徐々に感覚を取り戻していく。やっぱりこの温度は安心できて、自然と目を瞑った。

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