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第20話
お昼ごはんを食べ終えればまた繋がれて、何をするでもない時間を過ごす。
そんなに厳重に管理していたくせに、終わりのときは実に自然に訪れた。
「そろそろ約束の時間だよね」
そう言って彼は僕との繋がりを呆気なく外す。とっさに寂しいという感情が湧いた。
「あぁ。明後日また学校でな」
それを顔には出さずに、僕は拓海に別れを告げる。
拓海の家から僕の家までは1分もかからないのに、扉が閉まった瞬間に世界が隔たった感覚がした。今まで近くに居すぎたからかもしれない。
少しだけ、夕方の冷たい風にあたってみる。
思えば不思議な1日だった。
最初に手錠を見せられたときは驚いた。でも、繋がれてしまえばそんなに嫌とは感じなかった。そう言うと語弊が生じる気がするのでより正確に言えば、拓海に頼られているようで心地よかった。
縛られているのは僕なのに、人気者の拓海をこの1日だけは独占できた気がして。
でも、拓海がどうしてあんなことをしたのかは未だに分からない。本当に毎週これを続けるのか。それとも今日のは突発的なもので、冷静になればやっぱりやめようと言い出すのか。
それさえ僕には分からない。
彼は言った、僕の一番になりたいのだと。僕に彼女と別れろと。それらの言葉を思い出すと、そんなはずないのに心の中にある仮説が浮かぶ。
これではまるで、拓海が僕のことを好きみたいだ。
でもそれは有り得ない。
あんなにモテるのに、僕を好きになるなんて有り得るはずがない。
そもそも僕らは幼馴染みで、親友で、男同士なのだから。
きっと彼が僕の隣にいるのは、刷り込みの一種の効果に過ぎない。正常な無償の愛をもらえなかった拓海にとっては親友としての愛さえ新鮮に映り、彼自身も気付かないうちに求めるようになっただけ。
だから、拓海が僕を好きだなんて有り得ない。あったとしても、それはきっと勘違いだ。
「ただいまー」
その日はいつもより1時間以上も早く寝た。
次の日は遊んだ代償として、家にこもって宿題を必死で片付けた。
……そうして、2週目がやってくる。
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