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○第22話○
デートの日を使うのは最終手段。それまでに絶対、彼女を千秋ちゃんから引き離す。
趣旨が変わっていることには無視をして、僕はさっそく計画を実行に移し始めた。
「ごめん遅くなっちゃった」
そのためにまず、今日はクラスのカースト上位の女の子と帰ることにした。
「大丈夫だよ」
香水でもつけているのか、甘ったるい香りを連れて彼女が近付く。
「拓海と帰るの久しぶりだよね」
彼女は我が物顔で僕の腕に絡みついた。イライラする気持ちを抑えて、彼女の言葉を待つ。
「また新しい彼女できたの?今度は美穂なんじゃないかって、みんな騒いでる」
ーーキタ。彼女が色恋にしか興味のない人間であることに、今だけ感謝をする。
「はぁ……やっぱそう見られてるのか」
わざと困っているような素振りを見せれば、彼女は予想通り話に食いついてきた。
「何それ、違うってこと?」
気を抜けば緩みそうになる口元に力を入れながら、なるだけ自然に嘘をつく。
「違うよ。むしろ付き纏われて困ってるくらい」
僕は自分の見せ方も、見え方もよく知っている。彼女のような人間にとって僕は、ある程度正しいと補正される人間であると知っていた。
「めずらし。拓海って来るもの拒まず、って感じなのに」
「断るのが苦手なだけだよ」
「……それは私に対しても?」
「ううん、嫌だったら一緒に帰ろうなんて自分から誘わない」
彼女は「よかった」と、全く心のこもっていない余裕のある態度で答える。よほど自信があるのか、僕がそういうと分かっていたかのように。
「私も拓海のこと、好きだよ」
いつもは心の隙間をほんの少しだけ埋めてくれる言葉が、今はただただ鬱陶しい。
早く、僕のために動くと言ってくれ。
「ありがとう。……それで相談なんだけど」
今度は彼女の期待が外れたのだろう。若干不服そうな顔をして「何?」と尋ねられる。
「どうやって彼女を突き放せばいいと思う?俺だけじゃなくて千秋ちゃんにまで付き纏うようになって、さすがに迷惑してるんだ」
人を傷付けられない無垢な人間を演じながら、それでも困ってるんだと強調する。彼女を罠にはめるために。
案の定、彼女は少し考えたあとにニヤリと笑った。きっとこう考えたのだろう。僕に恩を売れる、絶好の機会だと。
「私が解決してあげようか?」
内心で大いに喜びながら、もちろん僕はその話にのった。
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