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○第24話○

「嘘?」 「昨日女の子たちに呼び出されて、拓海くん本人が私を迷惑だって言ってるって話を聞いたの」 そこでようやく、意外な問い詰めの理由を知った。彼女本人に伝えてくれたのは有難いことだが、よくも余計なことまで言ってくれたものだと思う。 だがまだ、言い逃れることは不可能ではない。肯定して彼女にどう思われようと知ったことではないが、千秋ちゃんにバレるのだけは避けたかった。 「俺はそんなこと言ってないけど。どこかで話が変わっちゃったんじゃないかな。ほら、噂だとこういうことよくあるし」 なぜそんな噂が流れてるのか分からないと心底不思議そうな態度でそう言えば、彼女は驚いた顔をして勢いよく頭を下げた。 「えっごめんなさい!私、みんなが言うからすぐに信じちゃって……。だよね、拓海くんがそんなこと言うわけないもんね。疑ってごめん……」 よかった、上手く誤魔化せたらしい。 「気にしないで。身に覚えのない噂がこんなにも広がってるんだから疑心暗鬼になるのは仕方ないよ。話はそれだけ?」 それならこれ以上の長居は無用だと、鞄を手にとって肩にかける。だが、 「待って!」 彼女の話はこれで終わりではなかった。 「疑ってたのにこんなことを言うなんて虫が良すぎるって分かってるけど……拓海くんからみんなに、誤解だって伝えてもらえないかな」 は?と声が出そうになるのを必死で抑える。彼女は続けた。 「この状況で私が誤解だって言っても信憑性ないだろうし、拓海くんも私なんかと噂になるのは嫌だろうから」 どうして僕がたてた計画を自分で潰さなければならないのか。そう言ってやりたいが、生憎と彼女はそのことを知らない。 「それに……このままだと千秋くんと話しにくくて」 極め付けはその言葉だ。わざとなのではないかと疑うほど、彼女は僕の怒りポイントを的確に押す。取り繕うのももう、限界だった。 「ねぇ……どうして美穂ちゃんはこんなにも俺の邪魔をするんだろうね」 「拓海、くん……?」 溜め息をつき冷ややかな声でそう言えば、彼女は僕の豹変ぶりに、驚きを通り越して怯えるような表情を見せた。僕自身、自分は人にこんな態度が取れたのかと驚く。 「女ってだけで千秋ちゃんの彼女になれて。世の中って不公平だと思わない?」 彼女が無言なのをいいことに、僕は続けた。 「今週の土曜日の朝10時、俺と千秋ちゃんは旭公園にいる。学校だとこんな話できないでしょう?だからそこで選んでもらおうよ。千秋ちゃんにとって、どっちが大切か」 本当は千秋ちゃんにキスをして、それをこの女に見せつけてやるだけのつもりだった。それなのに、最終手段をこんな形で使うなんて。 「逃げないでね」 怒り任せに乱暴に扉を閉めて、僕は教室を出た。

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