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○第25話○
『随分と思い切ったんだね。勝てる自信はあるの?』
自信なんてあるはずない。ただ、彼女に対して卑怯な手は通用しないと思っただけ。だからこそ苛つくし、彼女ならいいかもしれないと思った。
だからこれはただの、僕のけじめ。
『けじめって、また命でも賭けるつもり?』
そんな声の問いかけに、それ以外に何を賭けるものがあるのかと思う。千秋ちゃん無しで僕は生きられないと、そう教えてくれたのは声だというのに。
千秋ちゃんは僕を選ばないことくらい知っている。でも、このままの状態も僕には耐えられない。千秋ちゃんの一番になるのを諦めきれないまま、彼女が彼の隣にいるのを見るなんて。そして、千秋ちゃんにそういう存在ができる度に邪魔をしてしまいそうな自分に。
こんな気持ちが続くくらいなら、キッパリ諦める機会をもらって「千秋ちゃんの僕」のまま消えたい。
……これは贅沢すぎる望みなんだろうか。
そう思いながらもしっかりと足は動いていたようで、自分の家の前に立ち止まる。相変わらず明かりの点いていない真っ暗な家。
いつもなら夕食の準備をするのに、今日は真っ直ぐに自分の部屋へと向かった。そのままベッドに倒れ臥す。
何も、やる気が起きない。
「千秋ちゃん……」
彼しかいないとスマホを取り出し、電話帳のアプリを起動させ……そのままスマホの電源を落とした。
またこの間みたいに断られたら?そう思うと怖くなって、自然と指が動いていた。
それでも声は止まらなくて苦しさが増す。
誰かに会いたい。愛されたい。
なのに、誰にも会いたくない。
「千秋、ちゃん」
そう呟いて、僕はふらふらと立ち上がった。
……あの千秋ちゃんなら、僕を拒まないでいてくれるはず。
そう思った僕は本棚からアルバムを取り出して、その写真1枚1枚に目を通した。2人で写っている写真を撫でると、いくらか声が小さくなる。
一通り見終えればゆっくり閉じて、それを抱えたまま再びベッドに寝転んだ。
「千秋ちゃん……僕を選んで」
本音と同時に、目からは雫が流れ落ちる。
「僕を、捨てないで」
目の前が霞んでいくのを感じながら、それを拭うのも面倒だと固く目を閉じた。
暗く冷えきった部屋の中、何かから守るようにアルバムだけを抱きしめて。
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