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第40話
そうして、あることに気付く。
「あ……」
気付いた瞬間申し訳なさでいっぱいになって、思わず声が出た。
僕は、拓海が一番傷くことをしたんじゃないか……?
だって、僕のやったことは彼の周りにいる女の子たちと同じだ。もっと言えば、彼の父親とも同じ。
その場だけの「好き」は無いに等しいと、そう彼が思っていることを知っていたのに。
いくらその言葉を口にしたって、彼の周りの水の一部になっては意味がないと、僕は知っていたのに。
拓海が美穂に向かって言った、ある言葉が思い出される。
「好き?……そんな言葉で表せるくらいの、軽い気持ちだったらよかったのにね」
確かに彼はそう言っていた。
つまり彼にとっては、「好き」と言う言葉自体にほとんど価値が無い。
正直僕には理解できないけれど、大きな価値観の違いがそこにはあった。
人の価値観なんてものはそれぞれで、僕が彼の考えを完璧に理解できることなんてない。
でも寄り添うことなら可能だと、水の流れる音を聞きながらゆっくりと考える。
ーー僕は本当に、彼を愛してると言えないのか。
だとしたら、その理由はどこにあるのか。
男同士だから?
確かに根本はそうだ。でも、それは周りに認められないというだけで、僕らが思うだけならタダだろう。
幼馴染だから?
それも違う。むしろこれまでずっと一緒に居られたからこそ、彼と過ごす時間は心地いいし、これからも隣に居てほしいと思う。
様々な問いが浮かんでは消されていく。
そうしてやがて、ある1つの答えに辿り着いた。
ーー僕も十分、拓海のことを愛してるんじゃないか?
一旦そう思ってしまえば、思い当たる節は各所にあった。どうして今まで気付かなかったんだろう。
こんなことを真面目に考えている時点で、もうほとんど答えは出ているようなものなのに。
すうっと心が晴れていく。
残りの雲も完全に払うように、シャワーを固定してお湯をすくい、バシャっと顔にかけた。
そのままシャワーを止めて浴室を出る。
扉を開けた音が聞こえたのか、拓海から「タオルは2段目のを使って」と声が飛んできた。
さっきは気付かなかったが、1段目のタオルは乱雑に置かれ、2段目のタオルは綺麗にたたまれたまま置かれている。それぞれ誰のものなのか、簡単に予想がついた。
「もうすぐ出来るから先に上がってて」
わかったと答え、いつもより少し丹念に身体を拭いたあと服を着る。
ーー早く、拓海に伝えなきゃ。
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