46 / 60

第46話

そこまで言ってもポカンとする彼に、ずっと温めてきた言葉を伝えられるのは今しかないと思った。 「拓海、愛してる」 そう言って抱きしめれば、彼は小さな声で 「嘘だ……」と呟く。 嘘じゃないよという代わりに、もう一度抱きしめたまま「愛してる」と言った。 「でも、この前は」 「あの後いろいろ考えたんだ。そしたら、『愛してる』って言えない理由なんてないって分かった。 僕だってずっと拓海と一緒に居たいし、拓海の一番でありたい。これは、拓海の言う『愛してる』と同じでしょ?」 「でも、僕たちは男同士で……」 「今さら拓海がそれを言うの?大丈夫。そんなの周りにバレなきゃいいだけだよ」 「でも……」 「大丈夫だから。雰囲気に流されて言ってるわけじゃない。ただ、僕は拓海がずっと好きだったんだって自覚しただけ」 「ほん、とに……?」 「こんな嘘つかないよ」 そう言って顔を見合わせれば、彼は静かに泣いていた。僕は一筋流れたそれを指ですくって、その指に口付ける。涙特有の塩辛さが、口いっぱいに広がった。 「千秋ちゃん」 彼が僕の名前を呼ぶ。ふにゃりとした、気の抜けた笑みを浮かべながら。 「千秋ちゃん、千秋ちゃん」 彼がまた僕の名を呼ぶ。今まで宙に浮いていた彼の手を囲んで、今でさえ近かった距離がぐっと近くなった。 「……千秋ちゃん、愛してる」 とびきり甘い声で耳元で囁かれて、今度は彼と同じ言葉で返した。 「僕も、拓海を愛してる」 先週のやり取りをやり直すように紡がれた会話。確か先週はこの後ーー。 「約束、覚えてる?」 彼と約束をしたんだ。 「この前僕がしようとしてた続き、してもいい?」 そう言われ、約束の内容とともに先週の痴態も思い出す。顔が熱くなるのを感じながらも、拓海が言うならとコクリと頷いた。 ドサ、と音を立ててベッドに倒れこむ。 上には視界いっぱいの拓海の顔。 「……幸せ」 思わず、と言った様子でそう呟かれたのをきっかけに、拓海は僕の服を剥ぎ取っていく。 「千秋ちゃん、舐めて」 彼の指が口へと近付いてくる。なぜ、と疑問に感じつつも、彼の指の口内への侵入を許した。 最初は僕が舐めるだけだったのに、次第に彼の指が不規則に口内を駆け回るようになる。 ただ指を舐めているだけなのに、身体の温度が上がっていった。 やっと離された指は僕の唾液でドロドロになっていて。罪悪感と、妙な嬉しさが湧き上がる。 「千秋ちゃんの全部、僕に頂戴?」

ともだちにシェアしよう!