目の前で起こっている状況が理解できない。 上擦った甘い声が、自分の口から漏れているなんて信じられない。 「やぁっ、無理……！」 それ以上に理解できないのは後ろの状況。 今まで感じたことのない異物感と圧迫感が、どんどん増してくる。その原因が拓海の指だと頭では分かっていて、でも理解が追いつかない。こんなのダメだ、止めなきゃってことだけは分かるのに、拓海の顔を見ると止めたくなくなってしまう。 「っ、ぁ、……」 苦しくて痛くて、口から出る声は言葉にならない。 「千秋ちゃん、力抜いて。ほら、深呼吸」 そう言われて初めて、酸素が足りなくなっていたことに気付く。口を開いて必死に空気を吸えば、「可愛い」と状況に合わない言葉が落とされた。 「はっ、はぁっ……」 やっと呼吸がうまくできるようになって、少しだけ苦しさが和らぐ。そのタイミングを見計らったように、再びそれが動き出した。 「むり、無理だから、動かさないで……！」 身体のナカを掻き回される感覚と同時に、もう１本指が入ってこようする。 何も入ったことのないそこはただでさえいっぱいなのに、これ以上入るわけがない。 続きがこんなに痛いことだと知っていれば、もっと考えてから約束をしたのに。そんな後悔が心に浮かびかけたその時、ふわりと何かが頭に触れた。 それは拓海の手で、ゆっくりと頭を撫でるその仕草は、「安心して」とも「ごめんね」とも言われているようだった。 ……胸が、ぎゅっと締まる。 一瞬でも約束を無かったことにしたいと思ってしまった自分が恥ずかしくなった。受け入れたのは、受け入れたいと思ったのは、自分も同じな癖に。 「拓海っ、キス……して」 自分では起き上がれなさそうになくて、つい甘えた声を出す。目を閉じれば、すぐに顎に手が添えられて安心した。 「んっ、んん……」 後ろの不快感を忘れようと、深くて甘いキスに全神経を集中させる。 「んむっ！？」 そうしたはずなのに、キスとは違う謎の快感が全身に広がった。 なんで、という意を込めて目を開けば、拓海がゆっくりと離れて「やっと見つけた」と笑う。 「これで、少しは楽になると思うから」 そう言って彼が同じ所を押すたびに、全身に痺れのようなものが広がった。さっきまでとは違う、痛いだけじゃない不思議な感覚。 「やだっ、そこ、おかしい……！」 頭の機能の半分が停止して、何も考えられなくなるような、そんな感覚。