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○第52話○

本当は離したくなくて、何も問題がないならずっと繋がっていたい。でも現実はそうはいかなくて、このままでは風邪を引いてしまうし千秋ちゃんの身体にも良くないのだろう。 名残惜しくてゆっくりと離れれば、千秋ちゃんが小さく吐息を漏らして身じろぐ。トロリと自分の吐き出したものが流れ出て、シーツの上に染みを作った。 そういえば、出したままにしておくのは良くないんだっけ。 ふとそのことを思い出して、もったいないなと思う。千秋ちゃんが女の子だったら、たったこれだけの行為で一生縛り付けることができたかもしれないのに、なんて考えた。 あぁでもまたそれも違う。 千秋ちゃんは千秋ちゃんで、たぶん僕は、その構成要素の1つでも欠けたら愛せない。 さて、と立ち上がってお風呂に誘えば、予想通り「恥ずかしいから一緒は嫌だ」と返ってくる。でもそれを掻きださないと、と言えば「そんなことしなくていい」と返ってきた。 「お腹痛くなるの嫌でしょ?」 そんなことしなくていい、の意味が一緒ならいいのにと期待して。でもきっと千秋ちゃんのは、羞恥心から出た言葉なのだろう。 「でも……」 なかなか首を縦に振らない千秋ちゃんを少し強引に引っ張って、浴室へと連れていく。 自分のせいで千秋ちゃんが辛そうにするのは見たくないという建前と、次のときに断られる理由を少しでも潰しておこうという本音。 ……そのずっと奥にある、このまま千秋ちゃんのナカに自分を残せておけたらという欲望。 「んっ、はっ……」 結局は本音が勝って、千秋ちゃんのナカからそれらを掻き出していく。 いつもはシャワーで済ませるため慣れない浴室の熱気と、やけに響く千秋ちゃんの声。その2つに頭が働かなくなって、また別の欲が出てきそうになった。 それを押し込め、なんとか後処理を終える。それ以上は心臓に悪そうで、先に1人だけで部屋へと向かった。 端っこで丸まった布団と乱れたシーツ。戻ってすぐにベッドの上の惨状が目について、どうしたものかと考える。最低限の物しか置かれていない部屋には、当然ベッドの他に寝られそうな場所なんてない。仕方なくシーツをくるめて下におき、辛うじて無事な布団の上に寝ようかと考えた。 寒いからと言えば、また抱きしめながら寝られるかもしれない。

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