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第3話 10時のおやつができるまで
恭子のエプロンはすぐに見つかった。寝室のタンスの中にあった。
服を脱いでエプロンを身に付ける。
かなり小さいけど、そんなにキツいわけじゃなかった。
自分の姿を確認しようと鏡台に目を向けると……なんともオゾマシイ生物が鏡の中にいた。
自分をイケメンだなんて思ってなかったけど、それにしてもこれはヒドイ。
運動不足のぷよぷよの身体に、小さなエプロンが前掛けみたいに張り付いている。
なんか見たことあるなコレ。……あ、アレだ。童話の金太郎だ。
金太郎を現実世界に出して歳をとらせたら、今の俺みたいになりそうだ。
そして、水色のフリルのついたエプロンというのがまた問題だ。
似合ってないなんてもんじゃない。一種のテロと言っても過言じゃないかもしれない。
これを見てるとよくわかる。
裸エプロンなんて、俺みたいな三十路男がするもんじゃない。かわいいこがやって、初めて価値があるものだと。
でも、そんなことより、なにより問題なのは……。
「なんで俺……フル勃起してんだよ……」
俺のチン力に持ち上げられて、股間に大きな山ができている。
我ながらなかなか良い角度だ。スキージャンパーなら良い記録を出してくれそうな反り具合。
俺たち夫婦に子どもはいないが、ムスコは元気いっぱい背伸びをしてる。
……原因はわかってる。
恭二くんの声に、瞳に、俺の愚息が反応してるんだ。
このまま彼の前に行ったら、どんな反応をするのか。
そう考えただけで、ジャンプ台の角度がさらに上がりそうになる。
……いやいやいやいや。俺のほうが年上で義兄なんだ。いくらなんでも威厳がないにもほどがある。
戻る前に、この暴君を鎮めておかないと。
「おかえり。遅かったね」
「あ、ああ。探すのにちょっと手間取って」
「ふーん。それにしても……なかなか似合ってるじゃん」
「そうかな。ははは……」
似合ってないのは確認済みだけど、わざわざ否定することもない。
というか、こんな尻丸出しファッションが本当に似合っていたら非常に困る。
それよりも、舐めるように俺の身体の隅々まで見てくる視線に、せっかく鎮めた荒神様が目を覚ましそうになってきた。
「それじゃ、家事するから」
「はーい。がんばってね」
俺が掃除機をかけてる間も、洗濯物を干しているときも、いつも、恭二くんの視線を感じていた。
俺の身体を視姦するように、じっと見ていた。
「(ヤバ……今、尻丸見えだ……)」
剥き出しの肌を見えない手で愛撫されているかのように、なにもされてないのに反応してしまう。
こんな状況で、封印が守られるはずなんてなく、顔を出した荒神様の力によって、エプロンがこんにちはと持ち上がる。
それを少しでも隠そうと、平静を装おうとして、自然と中腰になっていった。
隠した結果、さらに筒抜けになっているのかもしれないけど、それでも、勃起度全開で洗濯を干すよりはマシだろう。
……というか、いつまで放っておかれるんだ……?
いつもなら、もうとっくに……。
「ねえ洋平……」
来た! ついに来た!
「もう10時だよ。なにかおやつ出してよ」
続いて発せられた言葉に、心が萎えた。下半身はまったく萎えてないけど、心は萎えた。
ここまで放置して、さらにとぼけるのか……?
……そっちがその気なら、ソノ気にさせてやる。
つかつかと歩み寄り胸を張り、座っている恭二くんの眼前に、準備万端のキカン棒を見せ付けた。
エプロンを持ち上げているキカン棒の先端は、恭二くんの鼻に当たるか当たらないかのところでビクビクしている。
「コレが……10時のおやつだよ」
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