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第4話 おあずけのその先に
「……ぷっ……あははははは。 コレがおやつ? へ~……ずいぶん美味しそうだね」
ああ……恭二くんの妖艶な表情に愚息が反応する。
期待の先走りが、エプロンに滲み出てきそうだ……。
「僕に見られてガマンできなくなっちゃったの? 悪い子だね」
「……こうなるように仕向けたくせに……」
「え~? なんのことかなぁ?」
「なに言って……ふぁっ……!」
イタズラな笑みを浮かべながら、恭二くんの指がエプロン越しに愚息にふれる。
軽くふれるだけのソフトな接触のはずなのに、爪先から頭のてっぺんまで電流が走ったみたいに足がガクガクと震えた。
「ん~? どうしたの?」
そ知らぬ顔で、恭二くんの瞳が俺を覗き込む。
緩やかな指の動きが、ザラザラなエプロンの裏地とフィットして、爆発しそうに膨張しきった愚息へリズミカルに刺激を送る。
「あ、ア、あ、ダメ……それ……」
「あははは! そんなにイイの?」
だって……久しぶりだし……ずっと……焦らされて……。
数時間前まで死火山だった股間棒が、今や噴火寸前まで込み上げていた。
もう噴火は秒読みだった。
「ぁ……あぁアあアアァあ……!」
「はいスト~ップ」
不意に、刺激がパッタリ止んだ。
見ると、恭二くんは手を離し、顔の横でひらひらさせていた。
「恭二くん!?」
中途半端に高まった発射台は、行くも引くもならずに、ただ虚しく上空を見上げている。
俺は身動きが取れなくなった。動いて刺激を与えれば、裏地の感触に誘われて暴発してしまいかねない。
これだけ焦らされ、弄ばれて、最後の最後で暴発なんて絶対に嫌だ。
「洋平ひとりだけ気持ちよくなるってズルいよね?」
イスに腰をかけたまま、足で俺の身体を弄ってくる。焦らすように、ガマンできなくなるように、俺から、懇願させるように。
暴発危険区域を避け、ねっとりと身体を嬲られる。
腕も、足も、肌を爪先がなぞっていく。
ゾクゾクとした快感が全身に走って、目の前が真っ白になってしまう。
こんなことをしなくても、俺の言葉は決まっている。
決まっているように……教え込まれた。
「ねえ洋平。なにか言ってよ」
「……あ、あの……恭二くん……」
恭二くんが俺の言葉を待つように動きを止めた。
妻と同じ顔が、だらしなく緩んでいるであろう俺の顔をじぃっと見つめていた。
かつては葛藤があった。抵抗もあった。
でもそんなものは、台風の前の藁葺き屋根のように、あっさりと吹き飛んでしまった。
恭二くんに吹き飛ばされた。そして、俺自身が、望んで捨ててしまったのだ。
だから、今この言葉を口にするのに、欠片ほどの迷いも生まれない。
「……お願いします。恭二くんに満足していただけるように、俺に、ご奉仕させてください」
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