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 第5話

 七月に入ったばかりの、梅雨の合間の晴天の日の撮影のことだった。  その日、ひなたは朝から体調が悪く、学校にいるときから、めまいとめまいから来る吐き気がひどくて、お弁当も喉を通らなかった。  体は休みたがっていたが、ひなたの気持ちがそれを許さなかった。  これくらいで休んだら、月野さんになにを言われるか分からない。  その日は屋外での撮影だった。真夏日でむしむししていて、体調の悪いひなたには、とても辛い。  スタッフが用意してくれたスチール椅子に腰かけ、自分の撮影の番を待っているとき、傍で立っていた月野が声をかけてきた。 「ひなた? どうした? 顔色が悪いぞ。大丈夫か?」 「え? ……はい。大丈夫です」  本当は気分の悪さも頂点に達していたのだが、月野に弱みを見せたくなくて、ひなたは強がった。 「じゃ次、ひなたちゃん、おねがいしまーす」  スタッフに呼ばれ、 「はーい」  ひなたが椅子から立ち上がった瞬間、ぐらりと目の前の景色が歪む。 「ひなたっ……!」  月野の声を聞いたのを最後に、ひなたの意識は真っ暗になった。

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