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第6話

 ゆらゆらゆらゆら。  気づけば誰かの腕に抱かれて運ばれていた。  ……父さん? ううん。そんなはずはないか。でも父さんを思い出す。  昔、まだ小さい頃、リビングで眠ってしまったオレを、父さんが部屋まで運んでくれたときも、こんな感じだったっけ。  あのときオレは、本当は起きていたんだけど、父さんに抱っこされるのがうれしくて、寝たふりをしてたんだっけ……。  幸せだった過去を思い出しながら、ひなたはゆらゆらと力強い腕に抱かれたまま、また意識が遠くなっていった。  ひんやりとしたタオルが額に当てられる感触に、ひなたは気がついた。 「ひなた? 気がついたか?」 「……月野さん、オレ?」  起き上がろうとするのを月野がとめる。 「しばらく横になってろ。撮影は最後に回してもらったから」  月野の車の助手席を倒して、ひなたは寝かされていて、運転席から月野が覗き込むようにして見ていた。 「……すいません……」 「顔色はずいぶんよくなってきてる。疲れが出たんだろ」  いつもは冷たい月野の切れ長の瞳が、気のせいか、とても心配そうな色を浮かべているように見える。 「体力には自信があったのにな」  ひなたはそう言って強がって見せたが、実際のところ学校とモデルの仕事の両立は案外きつく、ひなたはこの二カ月で五キロやせた。 「すぐに音をあげるかと思ったら、案外根性あるんだな、おまえ」  月野がひなたの髪にそっと触れながら、笑う。とても優しい笑顔だった。  その笑顔にときめくひなた。

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