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第12話

 ひなたは月野に恋をしていた。初めて知る胸を焦がすような恋を。……でも。  彼に気持ちを打ち明けることはできない。同性だからというのもあるが、それが本当の理由ではない。  ひなたが月野に思いを告げることができないのは――、  ――彼の左手の薬指に指輪があるからだ。  半年の月日は瞬く間に流れ行き、ひなたは無事モデルの仕事をやり通した。  最後の撮影が終わったあと、月野は初めて二人が話をしたファストフード店へひなたを連れて行った。  ……ここがすべての始まりの場所。  ひなたはしばらく感慨に浸った。  半年前、月野さんと初めて話したときは、なんて憎たらしい人だって腹を立てたっけ……。  それが、今は……。 「よくやり通したな、ひなた。モデルの契約期間が終わるのと同時に、うちの事務所に正式に所属してもらう」 「ありがとう、月野さん」  モデルの仕事を貫き通した充足感は勿論大きいが、ひなたには一つ気がかりなことがあった。 「どうした? なんだか浮かない顔だな」 「…………」 「ひなた? どうした?」 「オレ、今度はちゃんと男としてデビューするんですよね?」 「なんだ、まだ女装を続けたいのか?」  からかってくる月野に、ひなたは唇をとがらせ、 「違いますっ!」  思いきり否定してから、躊躇いがちに言葉を繋ぐ。

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