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第13話

「そうじゃなくって。……ただ……」 「ただ? なんだ?」 「……もう月野さんはオレの傍にいてくれないんだよね。だって月野さんはオレの正体がばれないようにするため、付き添っててくれていたわけだから」  そう、今まで月野がひなたに付きっ切りだったのは、ひなたが本当は男だということがばれないように、色々フォローしてくれるためだったばすだから。きちんと男として活動してくことになれば、もう月野は一緒にいてくれなくなるだろう。  ……分かってる。月野さんが既婚者で、叶わない恋だってことは。  でも、それでも、傍にいるだけでも幸せだったのに……。  今までは毎日のように会っていたけれど、これからはそうはいかないだろう。なんといっても月野はスカウト部の主任なのだ。  ひなたの言葉に月野は一瞬きょとんとした顔をしたが、やがてクスクスと笑いだした。  ひなたはムッとした。  オレがこんなに切なくて悲しいのに、なにがおかしいんだよ、もう。 「あのな、ひなた。世間の目というのはそんなに節穴じゃないぞ」 「え?」  今度はひなたがきょとんとする番だった。 「おまえがモデルとして雑誌に載り始めてからひと月もしないうちに、『ひなたさんは、本当は男の子なんじゃないですか?』っていう手紙が届き始めた」 「は?」 「当然、他のモデルの女の子たちは、おまえが男だととっくに気づいてたし」 「…………」 「もっと言うと、おまえは騙せていると思っていたみたいだけど、オーディションの審査員はみんな、おまえが男だって見抜いてたよ」 「えっ? えっ? じゃ、じゃあどうして、オレ、優勝できたの?」  ひなたは混乱してしまった。

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