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第15話
「おまえには役者の素質はあると思う。まだまだ実力不足だけどな。だから基礎からみっちり学んでもらう。音をあげるなよ」
「はいっ」
そして、ひなたは正式にシャイン芸能事務所に所属し、デビューすることに決まった。今度は正真正銘男の子としてだ。
月野も正式にひなたの専属マネージャーに就任した。
その日は土曜日だったこともあり、月野がお祝いと言って、ひなたを食事に誘ってくれた。
場所は両親が生きていた頃も行ったことがないような高級レストランである。
ソムリエがやって来て、月野がスマートにワインを注文している。勿論、ひなたは未成年なのでオレンジジュースだ。
……うわー、ソムリエって、オレ初めて本物見た。
テレビや漫画の中でしか見たことがなかったソムリエの登場に、ひなたの緊張は頂点に達した。
「月野さんー。こんなところ、オレ緊張しちゃうよー。ファミレスで良かったのに」
「おまえはうちの事務所のエースだからな。こういう場所にも慣れてもらわなきゃ」
「うーん……」
オレ、マナーとか知らないんだよなー。えーとフォークはどっちの手で持つんだっけ?
ひなたは月野の真似をして、なんとか食事を続ける。
と、月野のスマートホンが鳴り、
「ちょっとごめん」
そう言って彼はレストランの外へ行ってしまった。
こういうとき、ひなたの心は暗く沈んでしまう。
電話、奥さんからかな……?
どうしてもそんなふうに考えてしまうからだ。
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