17 / 55

第17話

 ワインは口当たりが良くておいしかった。  一口飲んで気が大きくなったひなたは、グラスに持っていたワインを一気に全部飲み干した。  ……あれ? これってもしかして、か、間接キスじゃない!?  そう気づいて胸が高鳴った次の瞬間、ひなたの顔がボッと火がついたように熱くなった。  うわー、なにこれー。顔とおなかの中が熱いー。  真っ直ぐ座っていられないくらいに、頭がクラクラした。  でも気分は悪くない……というか、なんだか楽しい。  そこへ月野が戻ってきた。 「悪い、社長からだった。ひな……ひなた!?」 「あー。月野さん、おかえりなさいー」  ひなたはグラグラと揺れながら、月野にヒラヒラと手を振った。 「ちょっ……おまえ、どうしたんだ?」 「あー、月野さんが慌ててるー」  ひなたはケラケラと笑った。月野は自分のワイングラスが空になっているのに気付いたようで、 「おまえ、ワイン飲んだのか……?」  呆れたように呟く。 「ちょっとだけだよ。いいでしょ。今日はオレが事務所に入った記念の日なんだからー」 「……まったく。まだ十七のくせに。おまけにぐでんぐでんじゃないか」 「酔ってませーん。それよりさ、月野さん、電話誰からだったのー? ねー」 「電話は社長からだと言っただろ」 「嘘だっ!」 「……だめだな。完全にできあがってるな、おまえ。ほら水飲んで」  月野はウエイターに持って来させたコップの水をひなたに差し出す。  喉が渇いていたひなたは水を飲み干したが、クラクラする頭は相変わらずで、ふわふわした気持ちも変わらない。

ともだちにシェアしよう!