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第20話

 ひなたの部屋の前に着いたが、どうも彼は起きそうにないくらい熟睡している。  ひなたのことは頻繁に送迎しているから、鍵が鞄のどこに入っているかは分かっているが、それでも月野は一応彼に声をかけた。 「ひなた、家に着いたぞ」 「んー」  ひなたは小さく身じろぎはしたが、またすぐに熟睡に戻ってしまう。 「鍵を開けて、中へ入るぞ?」 「…………」  今度は返事もなかった。  月野はひなたの鞄から鍵を取り出した。今まで部屋の外までは来たことはあるが、中へ入るのは初めてだ。  月野は少し躊躇ってから、鍵を開けると、部屋の中へ入った。  ひなたの部屋は狭く、質素な暮らしをしているのがヒシヒシと伝わってくる。  六畳ほどの部屋に申し訳程度のキッチンがついた1kの部屋。家具も家電も生活していくうえで必要最低限のものしかない。  月野は取りあえず部屋へあがると、一番奥に置かれているベッドへひなたを寝かせた。  ひなたはなにやらムニャムニャと呟いてから、枕にしがみついてまた眠ってしまう。その姿が幼い子供のようで、思わず笑ってしまった。  ベッドのすぐ傍に小ぶりのタンスがあり、その上に小さな仏壇が置かれている。  ……ご両親の仏壇か……。  月野は仏壇に向かいそっと手を合わせた。  仏壇の隣には写真が飾られている。ひなたを真ん中にした家族写真だ。中学の入学式の写真で、今より幼いひなたがやや緊張した顔で写っている。  しばらくその写真を眺めてから、月野はベッドで枕にしがみついているひなたの耳元に、声をかけた。 「おやすみ、ひなた。オレ、帰るからな」  すると、ひなたは月野のほうへ寝返りをうち、寝ぼけ声を出した。 「……月野さん?」 「ああ。ゆっくり眠れ。明日また迎えに来るから……」 「ん……」  そう呟くと、ひなたは熟睡に戻った。

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